NEWS

化学規制

2024.11.15

特定化学物質障害予防規則(特化則)とは?対象の有機溶剤なども、わかりやすく解説

特定化学物質障害予防規則(特化則)とは?対象の有機溶剤なども、わかりやすく解説

特定化学物質障害予防規則とは、健康被害を引き起こす恐れがある化学物質を使う労働者の健康を守るため、定められた法令です。詳しく、そしてわかりやすく解説します。

 

特定化学物質障害予防規則とは?

特定化学物質は人体への影響が大きいの図

化学物質は利用価値が高く、さまざまな用途で使われていますが、人体に悪影響を及ぼす物もあります。
「特定化学物質障害予防規則(特化則)」とは、化学物質の中でも、がんや皮膚炎、神経障害などの恐れがある特に有害なものから労働者を守るため、労働安全衛生法に基づき定められた厚生労働省令※です。

特化則は、有機溶剤中毒予防規則と同様に法令です。そのため、指定された物質を使う事業者は、この特化則を守る法律上の義務があり、違反した場合には罰則もあります。(本ページ最下部に弊社の代替品紹介ページのリンクがありますので併せてご覧ください)

また、特化則該当物質は有機則該当物質よりも有害性が高く、対策して使い続けるよりも他の有機溶剤に切り替えることができるのであれば切り替えることをおすすめします

※省令とは、法令の一種で、各省の大臣が法律に基づき定める命令です。国会で制定する法律に細かいルールを書くと柔軟な運用ができないため、法律には大枠を記載し、細かいルールは省令で定めることで現場の状況に合わせた柔軟な運用をしています。

そるぶ

特化則を理解するためには、まず有機則を理解することがオススメだよ!有機則がよくわからない、詳しく知りたいよ!という方は、関連記事の「有機溶剤中毒予防規則(有機則)とは?わかりやすく解説」でわかりやすく丁寧に解説しているから読んでね!

含有濃度と管理濃度とは?

含有濃度と管理濃度の違いを解説する図特化則で重要なのは「含有濃度」と「管理濃度」の二つの濃度です。
特化則指定物質には含有濃度と管理濃度(管理濃度は設定がないものもある)があり、その数値が物質ごとに異なっています。
含有濃度特化則に指定された物質が含まれる濃度超えると特化則の規制対象となる。
管理濃度作業場所の空気中に含まれている指定物質の濃度。該当物質を使用する場合この濃度以下に抑える必要があります。
お使いの物質が特定化学物質に該当する場合、特定化学物質障害予防規則の内容を細かく把握する必要があります

特定化学物質一覧

特化則の指定物質を3つに分類の図
特化則では、管理すべき化学物質を特定化学物質として指定し、さらに危険度が高い方から順に第1類、第2類、第3類※と分けています。特化則の各類の中でも、発がん性(の疑い)がある物質はそれぞれ特別管理物質に分類し、第2類に関しては、さらに細分化しています。

※「化学物質の審査および製造等の規制に関する法律」(化審法)でも第1種特定化学物質、第2種特定化学物質を定めていますが全く別のものです。

第1類特定化学物質

「がん等の慢性・遅発性障害を引き起こす物質のうち、特に有害性が高く労働者に重度の健康障害を生じるおそれがあるもの」が分類されています。一覧は以下の通りです。

〈第1類特定化学物質〉
※「▼」をクリックすると表が展開されます。
物質名 分類 含有濃度 管理濃度
アルファ-ナフチルアミンおよびその塩 特別管理物質 1%超 設定なし
オルト-トリジンおよびその塩 1%超 設定なし
ジアニシジンおよびその塩 1%超 設定なし
ジクロルベンジジンおよびその塩 1%超 設定なし
ベリリウムおよびその化合物 合金は3%超 ベリリウムとして0.003mg/m3
ベンゾトリクロリド 0.5%超 0.05ppm
塩素化ビフエニル(PCB) 非特別管理物質 1%超 0.01mg/m3

第2類特定化学物質

「がん等の慢性・遅発性障害を引き起こす物質のうち、第一類物質に該当しないもの」が分類されています。
第2類特定化学物質はさらに、特定第2類物質、特別有機溶剤等、オーラミン等、管理第2類物質の4つグループに分けられています。
それぞれ一覧を表にしています。

〈特定第2類物質:第2類物質のうち、特に漏洩に留意すべき物質〉
※「▼」をクリックすると表が展開されます。
物質名 分類 含有濃度 管理濃度
エチレンイミン 特別管理物質 1%超 0.05ppm
エチレンオキシド 1%超 1ppm
塩化ビニル 1%超 2ppm
クロロメチルメチルエーテル 1%超 設定なし
酸化プロピレン 1%超 2ppm
3,3’―ジクロロ―4,4’―ジアミノジフェニルメタン 1%超 0.005mg/m3
ジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト(DDVP) 1%超 0.1mg/m3
1,1―ジメチルヒドラジン 1%超 0.01ppm
ナフタレン 1%超 10ppm
ニッケルカルボニル 1%超 0.001ppm
パラ―ジメチルアミノアゾベンゼン 1%超 設定なし
ベータ―プロピオラクトン 1%超 0.5ppm
ベンゼン 1%超 1ppm
ホルムアルデヒド 1%超 0.1ppm
オルトートルイジン 1%超 1ppm
アクリルアミド 非特別管理物質 1%超 0.1mg/m3
アクリロニトリル 1%超 1ppm
塩素 1%超 0.5ppm
シアン化水素 1%超 3ppm
臭化メチル 1%超 1ppm
トリレンジイソシアネート 1%超 0.005ppm
パラ―ニトロクロルベンゼン 5%超 0.6mg/m3
弗化水素 5%超 0.5ppm
沃化メチル 1%超 2ppm
硫化水素 1%超 1ppm
硫酸ジメチル 1%超 0.1ppm

 

〈特別有機溶剤等:発がん性のおそれが指摘される物で有機溶剤と同様に作用し、蒸気による中毒を発生させるおそれのある物質。有機溶剤中毒予防規則(有機則)を準用する〉
※「▼」をクリックすると表が展開されます。
物質名 分類 含有濃度 管理濃度
エチルベンゼン(フェニルエタン) 特別管理物質 1%超 20ppm
クロロホルム(トリクロロメタン) 1%超 3ppm
四塩化炭素(テトラクロロメタン) 1%超 5ppm
1,4―ジオキサン(ジエチレンジオキサイト) 1%超 10ppm
1,2―ジクロロエタン(二塩化エチレン) 1%超 10ppm
1,2―ジクロロプロパン 1%超 1ppm
ジクロロメタン(二塩化メチレン) 1%超 50ppm
スチレン 1%超 20ppm
1,1,2,2―テトラクロロエタン
(四塩化アセチレン)
1%超 1ppm
テトラクロロエチレン(パークロルエチレン) 1%超 25ppm
トリクロロエチレン(三塩化エチレン) 1%超 10ppm
メチルイソブチルケトン(MIBK) 1%超 20ppm

※クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、1,1,2,2,-テトラクロロエタン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、スチレンの10物質は、2014年に有機則から移行になったものです。

〈オーラミン等:尿路系期間にがん等の腫瘍を発生するおそれのある物質〉
※「▼」をクリックすると表が展開されます。
物質名 分類 含有濃度 管理濃度
オーラミン 特別管理物質 1%超 設定なし
マゼンタ

 

〈管理第2類物質:上記以外の物質〉
※「▼」をクリックすると表が展開されます。
物質名 分類 含有濃度 管理濃度
三酸化二アンチモン 特別管理物質 1%超 アンチモンとして
0.1mg/m3
インジウム化合物 1%超 設定なし
クロム酸およびその塩 1%超 クロムとして0.05mg/m3
コバルトおよびその無機化合物 1%超 コバルトとして
0.02mg/m3
コールタール 5%超 ベンゼン可溶性成分として0.2mg/m3
重クロム酸およびその塩 1%超 クロムとして0.05mg/m3
ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除き、粉状の物に限る。) 1%超 ニッケルとして0.1mg/m3
砒素およびその化合物
(アルシンおよび砒化ガリウムを除く。)
1%超 砒素として
0.003mg/m3
リフラクトリーセラミックファイバー 1%超 5μm以上の繊維として
0.3本/cm3
アルキル水銀化合物
(アルキル基がメチル基又はエチル基である物に限る。)
非特別管理物質 1%超 水銀として
0.01mg/m3
オルト―フタロジニトリル 1%超 0.01mg/m3
カドミウムおよびその化合物 1%超 カドミウムとして
0.05mg/m3
五酸化バナジウム 1%超 バナジウムとして
0.03mg/m3
シアン化カリウム 5%超 シアンとして
3mg/m3
シアン化ナトリウム 5%超 シアンとして
3mg/m3
水銀およびその無機化合物(硫化水銀を除く。) 1%超 水銀として
0.025mg/m3
ニトログリコール 1%超 0.05ppm
ペンタクロルフェノール(別名PCP)およびそのナトリウム塩 1%超

ペンタクロルフェノールとして
0.5mg/m3

マンガンおよびその化合物 1%超 マンガンとして0.05mg/m3(レスピラブル粒子)
溶接ヒューム 1%超 マンガンとして0.05mg/m3(レスピラブル粒子)

 

第3類特定化学物質

大量漏洩により急性中毒を引き起こす物質。

〈第3類特定化学物質〉
※「▼」をクリックすると表が展開されます。
物質名 分類 含有濃度 管理濃度
アンモニア 非特別管理物質 1%超 設定なし
一酸化炭素
塩化水素
硝酸
二酸化硫黄
フェノール
ホスゲン
硫酸

 

特化則に該当する有機溶剤

特化則該当物質のうち、有機溶剤は「特別有機溶剤」と呼ばれます。
一覧は以下の通りです。

〈特別有機溶剤〉※「▼」をクリックすると表が展開されます。
物質名 CAS No. 管理濃度
エチルベンゼン(フェニルエタン) 100-41-4 20ppm
クロロホルム(トリクロロメタン) 67-66-3 3ppm
四塩化炭素(テトラクロロメタン) 56-23-5 5ppm
1,4―ジオキサン(ジエチレンジオキサイト) 123-91-1 10ppm
スチレン 100-42-5 20ppm
1,2―ジクロロエタン(二塩化エチレン) 203-458-1 10ppm
1,2―ジクロロプロパン 78-87-5 1ppm
1,1,2,2―テトラクロロエタン(四塩化アセチレン) 79-34-5 1ppm
ジクロロメタン(メチレンクロライド) 75-09-2 50ppm
トリクロロエチレン(三塩化エチレン) 79-01-6 10ppm
テトラクロロエチレン(パークロロエチレン) 127-18-4 25ppm
MIBK(メチルイソブチルケトン) 108-10-1 20ppm

青字が工業用でよく使われる有機溶剤です。
塩素系溶剤(ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン)は脱脂洗浄剤や樹脂洗浄剤として使用さています。
MIBKは塗料やインク、シンナーの原料になっています。
エチルベンゼンは単体で使われることはあまりありませんが、工業用キシレンには含まれるため、キシレンを使った塗料やインクなどにも含まれています。

特化則該当の化学物質を使う際のルール

特化則該当の物質を使う際のルールの図
特定化学物質障害予防規則では、全体に適用される規制はごくわずかで、特化則該当の特定化学物質をいくつかのグループに分け、それぞれで適用される規制が異なり、複雑になっています。

そこで有機溶剤のメーカーとして特別有機溶剤に的を絞り、特化則の中でも特に重要で代表的なルールを挙げます。

・特定化学物質作業主任者の選任
・従業員への有害性の周知
・年2回(6ヶ月に1回)の特定化学物質健康診断の実施
・年2回(6ヶ月に1回)の作業環境測定の実施
・局所排気装置の設置(蒸気対策)
・健康診断、作業記録、作業環境記録を30年間保存
・洗身、洗眼および洗濯設備の設置(第1類、第2類物質使用時)

簡単に言い換えると、有機則の義務事項30年間の記録保存身体の洗浄と洗濯設備の設置などが必要になります
有機則該当溶剤を使う際にかかるコストに加え、個人の健康診断や作業記録まで含めた各種記録の30年間もの長期間保存は企業にとって大変な負担になります。

また、身体の洗浄装置は万が一、体に化学物質が付着した際に直ちに洗い流すもので、シャワーと洗眼器がセットになったもので数十万円かかることもあり経済的な負担にもなります。

つまり、特化則該当の有機溶剤は有毒性が高く従業員の健康上のリスクがあるだけでなく、特化則を守らなくてはいけないことから企業にとっても大変な負担になります

そるぶ

上記のルールは簡略化したものだよ。詳細を確認したいという方は厚労省の「クロロホルムほか9物質を取扱う時には~記録の保存を延長し、作業記録を作成する必要があります~」や、法令文「特定化学物質障害予防規則」を確認してね。

 

特化則と有機則の違い

特化則と有機則の違いは以下の通りです。

項目 特定化学物質障害予防規則(特化則) 有機溶剤中毒予防規則(有機則)
対象有機溶剤 12 44種
健康診断 特定化学物質健康診断 有機溶剤健康診断
作業主任者 特定化学物質作業主任者の選任
有機溶剤作業主任者の選任(※特別有機溶剤を使用の場合)
有機溶剤作業主任者の選任
作業環境測定 第1、2類物質の濃度 該当する有機溶剤の濃度
記録の保管 30年 健康診断:5年
作業環境測定:3年
蒸気対策 局所排気装置
呼吸用保護具など
局所排気装置
呼吸用保護具など

特化則は発がん性がある(疑われる)化学物質を管理するためのもののため、記録の保管が厳しくなっています。

30年もの長い期間に同じ仕事を同じ人がするとは限りません。そのため、労働者の作業記録、健康診断の記録を30年間保管することは大変な負担となります

特化則に違反するとどうなるの?

特化則に違反すると上位法の労働安全衛生法に基づき、労働基準監督署の指導や、3年以下の懲役または50万円以下の罰金などを受けることがあります。
実際に換気装置の定期点検をしていなかった事業者や環境測定、特定化学物質健康診断を6ヶ月に1回行っていなかった事業者などが労基署から指導を受けた例があります。

富山県のある医薬品メーカーでは2022年6月、特化則に反して防毒マスクや保護メガネを外して特定化学物質の硫酸ジメチルを扱ったため、作業員3人が中毒症状を起こしました。特化則では作業主任者が作業を監視することを義務付けていましたが、このメーカーではそれもしておらず、書類送検されました。
このように特化則を守らないと、事故が起こり作業員を危険にさらし、書類送検される恐れもあります

特化則の適用除外

特化則の第2条の2には適用除外の規定が記されていますが、非常に複雑で特化則該当の有機溶剤においては基本的に適用されます。
適用除外にするためには、定められた含有濃度以下で使用するか、そもそも特化則の対象になっていない製品(特化則非該当品)を使う必要があります

そるぶ

特化則の適用除外について確認したいという方は「特定化学物質障害予防規則」を見てね!

特化則非該当品を使用するメリット

〈特化則に対応するためのコスト〉

項目 特化則該当品 特化則非該当品
換気装置 30万円~ 0円(義務ではない)
年2回の作業環境測定 14~16万円(年) 0円(義務ではない)
特定化学物質健康診断 6~8千円(1人、1年) 0円
特定化学物質作業主任者技能講習 受験料等約1万5千円 0円(義務ではない)
緊急用シャワー 約15万円~ 0円(義務ではない)

特化則該当品を使うと、上の図のようにさまざまな負担がかかります。
特化則非該当品を使うと、それらの義務事項がなくなりコスト削減につながり、労基署の指導や罰則も受けなくなります
弊社では用途別に特化則非該当品を多数ご用意しております。
下記リンクからご覧ください。

そるぶ

三協化学の特化則非該当製品の情報は「有機溶剤の代替品 有機則・特化則非該当 環境対応製品一覧」を見てね!

CONTACT US

製品に関する
お問い合わせ

TEL 052-931-3122

その他お問い合わせ・
受発注状況の確認

TEL 052-931-3111

受付時間:平日8:30〜17:30