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化学規制
2018.12.11
呼吸用保護具について
目次
机にこぼれた水を拭き取らずにそのままにしておけば、しばらくするとこぼれた水はなくなってしまいます。
なぜでしょうか?
正解は、水が水蒸気に変わって空気中に出ていってしまうためです。
水は100℃付近になると沸騰して内部から気体(水蒸気)に変わりますが、100℃よりずっと低い温度でも少しずつ水の表面から水蒸気に変わっているのです。
液体によって蒸発スピードに差こそあれど、同じことが有機溶剤も含め、他の液体でも起こります。
水蒸気が充満した部屋はムシムシして不快なだけですが、他の液体の蒸気が充満していると人体に非常に有害なケースがあり、場合によっては数分で命を落としてしまうおそれもあります。
呼吸用保護具とは
「人体に害をもたらすおそれのある環境下でも安全に呼吸ができる」ことを目的として着用する個人用の保護具のことを呼吸用保護具といいます。
保護具は、着用者の健康と生命を守る大切なものなので、JIS規格や型式検定により、構造・性能・規格が決まっています。
これらに適合、合格したものを選定することが大切です。
保護具の選定時に確認すべきこと
含有化学物質の確認
何の化学物質から身を守りたいか、というところの確認が必要です。
化学物質の種類や状態によって選択するフィルターや保護具の種類が変わってきます。
メーカーからSDS(安全データシート)を取り寄せ、使用中の製品に含まれる化学物質を確認します。
保護具の選定について
呼吸用保護具の選定
呼吸用保護具は、大きく「ろ過式」と「給気式」の2タイプに分けられます。
◆ろ過式
作業場の空気をきれいにして呼吸をする方式です。
吸入する空気に含まれる化学物質を保護具に装備されている「ろ過材」や「吸収缶」で除去することで、呼吸しても安全な空気に変えます。
ろ過式のメリットは「扱いやすい」ということです。しかし空気中の酸素濃度が低い「酸素欠乏環境*」では使用できないという欠点があります。
◆給気式
作業場の空気ではなく、ホースなどを用いて外部から安全な空気(酸素)を供給する方法です。
作業場の環境(酸欠、有毒ガス、粉じんなど)に関係なく使用できるのがメリットですが、ろ過式に比べ設備や装備が大がかりになったりと扱い難いのが欠点です。
保護具の系統図
株式会社重松製作所 取締役相談役 重松開三郎 「安全保護具の種類と正しい使い方(5)-マスクとメガネ-」図3より引用
一般社団法人日本クレーン協会 http://cranenet.or.jp/susume/susume05_07.html
最終閲覧日:2018年12月10日
たくさんの保護具がありますが、これらの保護具は職場環境の状況に応じて選択することになります。
ただし、以下の場合には給気式以外のマスクは使用してはいけませんので、注意して下さい。
- 有害物の種類が分からない場合
- 酸素濃度が18%未満になるおそれがある場所
- 有害物の濃度が2%(アンモニアの場合は3%)を超えるおそれがある場合
- 有害物の濃度が職業ばく露限界の100倍(1日の使用時間が30分以内の場合は特例があります)を超えるおそれがある場合
保護具の種類が決まったら、同種類の呼吸用保護具の中でも有害物質の漏れこみが少ない(防護係数の高い)マスクの選択が推奨されます。
有毒物質の濃度が高く、短時間曝露で生命・健康に危険がある場合には、より防護性能の高い呼吸用保護具を使用しましょう。
フィットテストをする
マスクの顔面への密着性の確認はとても重要です。
着用者の顔面とマスクの面体がしっかり密着していないと、有害物質がそこから入り込んでしまい、せっかくのマスクの効果が低下します。
そのため、マスクの面体は着用者の顔面に合った形状、およびサイズを選びましょう。
密着性の確認方法
①作業時に着用する場合と同じようにマスクを着用します
保護帽や保護眼鏡などの着用が必要な作業でマスクを使用するときは、保護帽や保護眼鏡も同時に着用してテストします。
②次のAかBのいずれかの方法で密着性を確認します
A)陰圧法
フィルターの吸気口を手のひらで塞ぎます。このときマスクを顔に押し付けないようにしてください。
ゆっくりと息を吸った時、顔と面体の接触部分から空気が入り込まないことを確認してください。
マスクが顔に吸い付く感じがしたら、正しく装着できています。
B)陽圧法
マスク全体を両手で覆います。このときマスクを顔に押し付けないようにしてください。
顔と面体の接触部分から呼気が漏れ出ないことを確認します。面体内に呼気が滞留してマスクが膨張する感じがしたら、正しく装着できています。
上の2種類のチェックには、「フィットチェッカー」を使うことで、吸気口または排気口が覆いやすくなり、より簡便にテストが行えます。
〇複数の保護具を使用する場合
複数の保護具を使用する場合は、フィットテストをし、保護具同士の密着具合など相性も確認することも必要です。
※マスク購入時には保護具の製造メーカーに相談し、より安全に作業ができるようにして下さい。
酸素欠乏環境とは
通常の空気よりも酸素濃度が低くなっている環境の事です。
主に、生物の呼吸や化学反応によって酸素消費量が多いにも関わらず通気性が悪く酸素が入ってこない時に起こります。
通常の酸素濃度は21%程度で、18%が安全下限濃度とされています。何故18%かというと、人間の肺から排出される気体の酸素の濃度が16%だからです。
酸素は濃度の高い所から低い所へ移動する性質があります。もし酸素濃度が16%未満の空気を吸ってしまうと呼吸するたびに肺から体内の酸素が外の空気に奪われてしまうことになります。そうなると脳をはじめとする体中のあらゆる部位で酸欠をおこしてしまいます。
「息をとめる」状態とは全く違いもっと危険な状況なのだという認識が大切です。
酸素欠乏により現れる体の変化
数値 | 特長 |
21%以上 | 正常な機能を維持 |
18% | 安全下限だが、作業環境内の連続換気、酸素濃度測定、安全帯など呼吸用保護具が必要 |
16% | 脈拍・呼吸数増加、筋力の低下、吐き気、集中力の低下 |
12% | 判断力の低下、酩酊状態、意識朦朧、体重支持不能で墜落、体温上昇 |
10% | 顔面蒼白、意識不明、皮膚や粘膜が青紫色になる、嘔吐 |
8% | :危険を感じても動けず叫べず意識喪失、行動の自由を失う |
6%以下 | 数回の呼吸で失神、痙攣、心肺停止 |
そのため、酸素欠乏環境ではかならず給気式保護具を使用して下さい。
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