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化学規制
2025.02.14
中華人民共和国長江保護法とは?有機溶剤など化学品との関係を中心に解説
長江保護法(中華人民共和国長江保護法)とは、中国最長の大河である長江の流域の生態環境保護と回復、資源の合理的かつ効率的な利用を促し、自然との調和ある共存と持続的発展のために制定された中国の法律です。
具体的な法律の内容を、有機溶剤などの化学品との関係や日本企業への影響を中心にわかりやすく解説します。
目次
長江保護法制定の背景と目的
長江とは、青海省のチベット高原を水源とし、東シナ海へ流れる全長約6300kmの中国最大の川です。世界でもナイル川、アマゾン川に次ぐ第3位の長さを誇ります。流域面積は、約180万8500km2、水源から河口までの落差は5100m、年間流水量は約1兆トンです。
日本最長の川である信濃川は、長野県と新潟県を流れ、長さは367km、流域面積1万1900km2です。比べると長江がいかに大きい川であるかおわかりいただけると思います。
日本では、長江の最下流部(湖口~上海)の名称でもある揚子江(ようすこう)の名で、よく知られています。
その流域には、成都や武漢、重慶、南京、上海などの工業都市や商業都市があり、人口の集中地域があるため、流域人口は約4億5千万人に達し、中国の人口の約3分の1が暮らしています。
長江は長年にわたる乱獲や開発、砕石、航路の整備などの影響で、生態環境は大きく破壊され、長江の固有種であるヨウスコウカワイルカの絶滅などを引き起こし、漁業の対象となる魚などの水産資源もほぼ枯渇してしまいました。
そうした流域環境を改善するために2021年3月に施行されたのが中華人民共和国長江保護法です。
中国では初めての河川流域保護法です。※2023年4月には黄河流域の河川流域保護法である黄河保護法が施行されています。
長江保護法での「長江」には、長江の主流と支流、長江につながる湖沼により形成された集水区域全てを含みます。
長江保護法の概要
長江保護法は、全9章96条で構成され、計画や管理、資源保護、水質汚濁防止、生態環境の回復、法的責任について規定しています。
有機溶剤や化学品、危険品との関係を中心に見ていきます。
化学工業団地と化工事業の制限
長江保護法の第22条と第26条で、長江の川岸から1kmの範囲では、化学工業団地と化学コンビナートの新設、拡張を禁止しています。
同法施行後には長江から1km内に位置する化学工場が現地政府から移転を求められています。
違反した場合は、50万元以上500万元以下の罰金、違法所得の没収、違法行為を行った責任者に5万元以上10万元以下の罰金が科され、状況に応じて事業の停止や設備の閉鎖が命じられます。
危険化学品の河川輸送禁止
長江保護法の第51条で、長江流域では毒性の高い化学品や危険化学品を水上輸送することを禁止しています。
化学品を輸送する場合は、陸上輸送にする必要があります。
違反した場合、是正命令、違法所得の没収、20万元以上200万元以下の罰金、管理者に対する5万元以上10万元以下の罰金が科せられ、重大な場合は営業停止命令や関連許可証が取り消されます。
上海海事局による規制
日本から化学品を中国へ輸出する際に大きく影響してくるのが、上海海事局による規制です。
長江の河口に位置する上海港を管轄する中国上海海事局は、長江保護法施行にあたり、上海港の外高橋港区では輸送禁止貨物に該当する化学品を載せた船舶の出入港、通過、積み替えを禁止しました。
具体的な規制内容は以下の通りです。
・外高橋港区を経由して出入港、通過、積み替えを行う予定の船舶に積載するコンテナ危険貨物が混合物である場合、危険物申告手続きで、全ての成分の名前とCAS番号、割合が開示されたSDSを提出するよう推奨する
・一部の成分が輸送禁止貨物に属する混合物については、「健康に対する有害性-急性毒性の区分」「水生環境有害性-急性毒性の区分」「水生環境有害性-慢性毒性の区分」の3項目のGHS区分指標を提出し、全てが区分1に達していなければ輸送禁止貨物に該当しない
・3項目のいずれかが区分1に達している場合は、輸送禁止貨物として扱われるため、外高橋港湾地区を航行して出入港、通過、積み替えはできない・SDSで全ての成分情報が開示されていない混合物については、上記の3項目のGHS区分指標を提出し3項目の指標全てが区分1に達していなければ輸送禁止貨物に該当しない
・3項目の指標でいずれかが区分1に達している場合は、成分名とCAS番号、濃度範囲を含む、混合物の危険有害性区分1に該当する全ての危険有害成分が、輸送禁止貨物に該当する場合は、外高橋港湾地区を航行して出入港、通過、積み替えはできない
上記の内容を要約すると、以下の項目に1つでも当てはまる化学品は上海港外高橋港区を経由して出入港、通過、積み替えができないということになります。
・健康に対する有害性 急性毒性 区分1
・水生環境有害性 急性毒性 区分1
・水生環境有害性 慢性毒性 区分1
広東省の現地製造拠点から中国国内へ有機溶剤などを供給
ここまで見てきたように上海港などを含む長江流域では、長江保護法によりさまざまな規制が科せられています。
特に、上海海事局による規制では、有機溶剤などの化学品を日本から上海港を通して輸出する場合、その化学品が輸送禁止貨物に該当すれば、積み替えどころか、入港、通過もできません。
長江保護法の他にも、中国には化学品に関する難解な法令が多く、化学品を輸出しようとすると手間と費用がかかります。
その他の中国の法令については「中国の化学品(有機溶剤、洗浄剤、危険品等)に関する法令をわかりやすく解説」で解説しておりますので合わせてご覧ください。
弊社、三協化学では中国広東省東莞市に製造拠点を設けて現地から製品を供給しているため、輸出にかかる費用と手間を抑えることができます。
同製造拠点では、一斗缶やドラムの荷姿の単体有機溶剤や洗浄剤、剥離剤、シンナー類を製造しています。
※界面活性剤や添加剤を添加するような作業はできないため、塗料や接着剤には対応しておりません。
具体的な費用については、ぜひ下記のお問い合わせリンクからお気軽にご相談ください。
下記の表は、弊社現地製造拠点の対応エリアと対応可能製品です。
項目 | 詳細 |
対応エリア | 広東省および福建省、広西チワン族自治区、上海市、浙江省、江西省、天津市、山東省、湖南省、湖北省、海南省、江蘇省、安徽省、河南省、四川省、重慶市、山西省、河北省、北京市、黒龍江省、遼寧省、吉林省(東北三省)、雲南省、貴州省、陝西省、甘粛省 ※一部配送できないエリアあり |
対応可能な単体溶剤 | トルエン、キシレン、MCH(メチルシクロヘキサン)、メタノール、無水エタノール、IPA(イソプロピルアルコール)、酢酸エチル、酢酸ブチル、MEK(メチルエチルケトン)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、PM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、NMP(N-メチル2ピロリドン)ほか多数 |
対応可能な混合溶剤 | 各種脱脂洗浄剤、グリース洗浄剤、金型洗浄剤(離型剤除去剤)、印刷インク洗浄剤、インク洗浄剤、光造形3Dプリンタ向け洗浄剤、シルクスクリーン洗浄剤、接着剤洗浄剤、フラックス洗浄剤、ソルダーペースト洗浄剤など |
※上記製品以外でも一度、ご相談ください。可能な限りご対応いたします。
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そるぶ
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電子グレードの各種溶剤にも対応可能
以下の表の物質について、約30種の金属分析ができ、純度99.0~99.95、パーティクル0.5~0.1μm対応可能です。
電子グレード対応物質一覧※「▼」をクリックすると表が開きます。
物質名 | CAS番号 |
アセトン | 67-64-1 |
メチルイソブチルケトン(MIBK) | 108-10-1 |
N-メチルピロリドン(NMP) | 872-50-4 |
シクロヘキサノン(アノン) | 108-94-1 |
シクロペンタノン | 120-92-3 |
プロピレングリコールメチルエーテル(DPM) | 34590-94-8 |
プロピレングリコールメチルエーテルエステル(PMA) | 108-65-6 |
メチルジグリコール | 111-77-3 |
ブチルカルビトール | 112-34-5 |
エチルカルビトール | 111-90-0 |
3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP) | 763-69-9 |
メトキシプロピオン酸メチル | 3852-09-3 |
酢酸エチル | 141-78-6 |
イソプロピルアルコール | 67-63-0 |
モノエタノールアミン | 141-43-5 |
ジエタノールアミン | 111-42-2 |
トリエチルアミン | 121-44-8 |
モノメチルホルムアミド | 123-39-7 |
ジメチルアセトアミド(DMAC) | 127-19-5 |
出荷の際の包装規格は以下の表の通りです。※「▼」をクリックすると表が開きます。
種類 | 容量 |
缶(高密度ポリエチレン) | 1ガロン、10L、20L |
ドラム(高密度ポリエチレン) | 200L |
IBC(高密度ポリエチレン、ステンレス) | 500L、1000L |
In BLUK(ステンレス) | 10m3、25m3 |
有機溶剤などの化学品を中国で使いたいとお考えの方は、下記リンクから弊社までお問い合わせください。
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