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化学用語解説

2018.11.02

生分解性について

生分解性について

 

生分解 (せいぶんかい) Biodegradation

先日の新聞の見出しに、「某会社が生分解プラスチック事業を強化する」とありました。
これを読んで、地球汚染防止の波が本格的に訪れてきたと感じたあなたには、生分解とは何か解説する必要がないかもしれません。

 

生分解とは

OECDの定義では、
生分解は有機物が微生物によって二酸化炭素、水、アンモニアなどのより単純な物質に分解される過程であるとされています。
微生物というのは具体的に2種類あり、好気性細菌嫌気性細菌です。

 

好気性細菌は、酸素のあるところで正常に生育する細菌で、枯草菌や結核菌、酢酸菌などがそれに当たります。
一方で、嫌気性細菌というのは、酸素の存在する環境では生活が困難、または不可能な細菌で、乳酸菌や破傷風菌などが該当します。

 

それらの菌が有機物を分解して単純な物質にしてしまう過程が生分解性です。

 

各国の科学者の集まりであるIUPACの定義では、
生分解とは細胞の作用から生じる酵素的プロセスによって引き起こされる分解であるとされています。

 

つまり生分解とは、バクテリア、菌類、その他の生物によって化合物が無機物まで分解されることを言います。

 

酵素のハサミで、分子結合が切られるのをイメージすると分かりやすいかもしれません。

生分解についての説明画像

重要なのは時間。分解速度です。
分解速度に関係する要素としては、光や水、酸素や温度などの環境や、その化合物自体が分解菌に利用されやすいかどうかが鍵になっています。

一番身近な生分解とはコンポスト(堆肥)化ですが、
通常生分解がバクテリアや真菌などの微生物などによる自然発生的な分解なのに対して、コンポスト(堆肥)化は特定の状況下で生分解を起こさせる、人間主導のプロセスになっています。
ようは自然的人為的かというお話です。

家庭から出される生ごみの量を少なくするためのコンポスト(堆肥製造器)は、水気を含んだままの野菜くずや、魚の頭・骨・ワタ、図にもある通りバナナの皮や野菜果物の芯、期限を過ぎて傷んだ食材などを入れます。
そうすることで酵素クンが量を小さく+乾燥状態にしてくれるので、直接生ごみをゴミ袋に入れるよりもカサが小さくなるし、庭木・鉢植えの肥料としても使えるようになります。

経験的に分かっているのは、コンポストはわりと好き嫌いが激しいことです。
例えばスイカは水気が多すぎて分解が上手くいきません。
また、鶏の骨は分解に時間がかかります。
好きな?食材?は1日で分解します。
土に被せる形の大型コンポストは時としてモグラ君の住処になります。地中から侵入するので防ぎようもありません。
まあ、多様性を思えばそれはそれで終わりですが・・・。

家庭用の小規模なコンポストに比べ、商業用のコンポストは、大型粉砕機を用いて木屑や葉っぱなどを小さなチップ状にして、必要に応じて生分解を推進する酵素などを投入し、次工程での堆肥化時間を短縮します。土壌改良でも同じような機械が使われています。

 

生分解プラスチック

それで、今回の主題のプラスチックですが、同じく最近報道された、世界中の塩の9割にマイクロプラスチックが入っていたという問題について少し触れておきたいと思います。

マイクロプラスチック問題

マイクプラスチックとは、プラスチックが粉々になって、大きさが5mm以下になったもののことを言います。

今回、日本の塩は調査対象外だそうで、何しろイオン膜・立釜法という製法が大変きれいな塩(世間では味気ないと言う人もいます←私です)なので、変なものがない、純粋な塩化ナトリウムNaClのため、対象外になったようです。
だから日本で暮らしている我々の暮らしが安全かというと、それは全く違います。

日本の塩生産量は93万トン弱で、国内で食用に使われる塩をほぼまかなえる量が造られています。
しかし、財務省貿易統計によると、日本の塩自給率は12%で、世界34位・・・。
それは需要の大半を占めるソーダ工業用に使われる塩がほぼ輸入頼りだということが大きいでしょう。

また、海外からの輸入食品にはその国で売られている塩が使われており、日本の会社が海外工場や提携工場から仕入れて売っている加工食品には外国の塩が使われています。

生分解プラスチック

生分解プラスチックとは、それを使っているときは機械的強度を維持するけれども、使用後に低重量化合物および無毒性副生成物に分解する物質を言います。
生分解プラスチックと一言で言っても、各種分解速度は様々です。

生分解プラスチックがこれから本格的に増えるとしても、既に世界中の陸海空にばらまいた(マイクロを含む)プラスチックは簡単に無くなりません。
以下の様な研究があります。

地上環境でアイテムが分解される時間
アイテム 時間
生分解される野菜のイメージ 野菜 5日-1ヶ月
生分解される紙のイメージ 紙 2–5 ヶ月
生分解されるTシャツのイメージ 綿製Tシャツ 6ヶ月
生分解されるオレンジの皮のイメージ オレンジの皮 6ヶ月
生分解される木の葉のイメージ 木の葉 1年
生分解されるウールの靴下のイメージ ウールの靴下 1–5年
生分解されるミルクパック・コート紙のイメージ ミルクパック・コート紙 5年
生分解される革靴のイメージ 革靴 25–40年
生分解されるナイロン繊維のイメージ ナイロン繊維 30–40年
生分解されるブリキ缶のイメージ ブリキ缶 50–100年
生分解されるアルミ缶のイメージ アルミ缶 80–100年
生分解されるガラス瓶のイメージ ガラス瓶 百万年
生分解される発泡スチロール・カップのイメージ 発砲スチロール・カップ 500 年以上、永遠
生分解されるプラスチック樹脂袋のイメージ プラスチック樹脂袋 500 年以上、永遠

500年以上、永遠だなんて恐ろしいですね・・・。
実はこれにはもう一つありまして

海洋環境で化合物が生分解するのに要する時間
化合物 時間
ペーパータオル 2–4 週
新聞紙 6 週
リンゴの芯 2ヶ月
段ボール箱 2ヶ月
ミルクパック・コート紙 3ヶ月
綿製手袋 1–5 ヶ月
ウール手袋 1 年
合板 1–3 年
塗装された木の棒 13 年
プラスチック樹脂袋 10–20 年
ブリキ缶 50 年
使い捨ておむつ 50–100 年
プラスチック・ボトル 100 年
アルミ缶 200 年
ガラス瓶 不明

前の表と行数を合わせるべきとご指摘はごもっとも、私もそう思いました。
通常大気中では500年以上かかるプラスチック袋が海中では20年で分解するのは良いことですが、カメさんが食べて胃で消化されず残り、空腹感を持てないまま飢餓死するのはたまりません。

未来に残す負の遺産を出来るだけ少なくするために、資源ゴミはきちんと仕分けして出し、生ごみはコンポストで小さくしましょう。
コンポストを置く場所/管理が出来ない時は生ごみ乾燥機を検討しましょう。自治体によっては補助金がもらえます。

東南アジアでは昔は食品をバナナの葉で包んでいましたが、今はビニール袋と発砲スチロールのトレイ全盛で街角から田舎の道端迄石油系のごみに溢れています。
この結果が、先の9割の塩にマイクロプラスチックが含まれていた問題で、東南アジアの塩が一番含有度合いが高かったのに繋がっています。

自然からのしっぺ返しがいづれ来ると思います。

 

 

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