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化学用語解説
2018.10.31
ラジカル塗料について
ラジカル塗料の前に・・・
まずはラジカル塗料の「ラジカル」について、そしてその前に「リベラル」という言葉から。
今20代、30・40代の人にとっては歴史上の人物ですが、イギリスの首相にウインストン・チャーチルという人がいました。
昔は大変に有名な人で、いまどきのイギリスの首相が100年後にほとんど忘れられていても、チャーチルの事は忘れられていないだろうというくらいには有名です。
哲学者のフランシス・ベーコン、小説家のモーム、童話作家A.A.ミルンなどと並び、チャーチルの演説や名言が大学受験英語などで取り上げられることも多く、今この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら触れたことがあるかもしれません。
彼の名言にはいろいろありますが、そのうちの一つに次のようなものがよく紹介されます。
「20歳の時リベラルでなければ、あなたには心がない。40歳の時保守でなければあなたは頭が悪い」
これを英語で探すといくつも出てきますが、細部が違っています。
まずこれがさきの日本語訳の原文です。
“If you’re not a liberal when you’re 20, you have no heart.
If you’re not a conservative when you’re 40, you have no head.”
ですが下記の英文では、齢を5歳とったりわかくなったりしています。
“If you are not a liberal at 25, you have no heart.
If you are not a conservative at 35, you have no brain”
Winston Churchill quotes チャーチル名言、quoteは見積するだけでないんだ!
どちらにしても、言わんとする意味は分かると思いますが、一番面白いのは実はこの言葉は、チャーチルが言ったのではないと言う説があることです。彼が言ったことにすれば、箔が付くと思った人が居るのかもしれません。
フランスには同じ意味の「心は左、財布は右」と言う簡潔な言葉があります。
出典はAnatole de Monzie 1947年1月11日パリで死去したアナトール・ド・モンジ (フランスの政治家。 戦争期の財政と国家教育の大臣) の “Le Français a le cœur à gauche, mais le portefeuille à droite”です。
チャーチルの言ったリベラルの語源はラテン語のliber、政治信条が左翼と言う意味。
本日の主題、ラディカルの語源は英語radical。
基本的には人や思想がリベラルよりも「急進的、過激、極端」の意味になり、主に政治の世界で使われます。
「急進的」という意味から派生して、「根本的、抜本的」という意味もあります。
日本語で過激派と聞いてあまりよいイメージがないのように、ラジカルも使い方の難しい言葉でもありますが、
今日は化学の世界で使われる場合のラジカルで、純粋に化学反応でできる不対電子をもつ原子や分子、あるいはイオンのことを指します。
ラジカル(化学)
原子や分子の軌道電子は通常対で存在し、安定な物質やイオンを形成しています。
ここに熱・光などのエネルギーが加えられると、電子が励起(れいき:分子・原子・原子核などが外部からエネルギーを得て、初めより高いエネルギーをもつ定常状態に移ること)されて移動したり、あるいは化学結合が二者に均一に解裂(かいれつ:共有結合が千切れる際に、電子が両原子に1つずつ分配されるように開裂すること。 ということはつまり、ラジカルを2個生成する)することによって不対電子ができ、ラジカルが発生する。
ラジカル塗料とは
ラジカル塗料とは、「ラジカル制御型の酸化チタンを使用した塗料」のことを言います。
ラジカル制御、というのは塗料の耐候性を向上させる技術です。
淡彩色系塗料調色用の塗料です。
ちょっとよくわからないですね。もう少し噛み砕いてご説明しましょう。
塗料に含まれる白色の顔料が太陽光を吸収すると、塗料劣化の原因物質が発生します。
この塗料劣化の原因物質というのが「ラジカル」です。
ラジカルが発生しないように制御するのがラジカル制御型塗料なのです。
実際には、下の2つの技術を掛け合わせたのがラジカル塗料です。
- 発生したラジカルを酸化チタン内に閉じ込めておく技術
- 漏れ出たラジカルを光安定剤(HALS)で補足無害化する技術
ラジカル塗料の特徴
「ラジカル制御型シリコン塗料」は、これまで一般的だった「シリコン塗料」と比較すると、高い耐候性があります。
1.5倍位持つと言われていますが、実際発売されてまだ5年(2012年、最初の製品発売。各社後に続いた) 位しか経っていないので、実績はまだ出ていません。
価格は、「ラジカル制御型シリコン塗料」は「シリコン塗料」よりも「ラジカル制御型酸化チタン」という高品質の顔料(特定波長の光を選択的に吸収することで、反射または透過する色を変化させ人の目が色を感じる様にする)を使用しているため高くなります。
1.5倍持つなら、価格が1.5倍以下なら問題はないハズですが、実際の塗料の塗り替えは、例えばマンションの等の大規模修繕なら、足場の費用、代替駐車場の費用等々が関連してかかってくるので、通常3回の塗り替えが2回になればそれはそれで助かるものです。
個人のお宅でも基本的には同様のはず。
努力された塗料メーカーさんに弓引くようですが、最近合成スレート瓦やサイディングで30年保証を謳う品が出ています。
同様にまだ出たばかりで30年経過していないので実績はありません。やはり、工場で作るものは、現場作業の塗装に比べて品質向上が楽みたいです。 おわり。
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