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化学用語解説

2018.10.24

魚毒性について

魚毒性について

※少しグロテスクな話題が出てきます。苦手な方はご注意ください。

 

魚毒性とは

水に溶けた化学物質が、魚類に及ぼす毒性のことを魚毒性いいます。
水生環境有害性、と言われることもあります。

 

魚毒試験の方法とその利用

魚毒性試験のための魚類としては一般的にヒメダカコイなどが使用されますが、他にもブルーギル、ニジマス、グッピー、ゼブラフィッシュ、ファットヘッドミノーなども使用してよいとされています。
これらの魚を対象として、水に溶かした化学物質(試験物質)を96時間ばく露し、その死亡率を測定します。
化学物質(試験物質)が対象魚類の50%を死に至らしめる、薬剤濃度「LC50」を測定する方法も同じ手法です。
死亡率が高いほど魚毒性が高いことになります。

ばく露とは

辞書では「細菌・ウイルスや薬品などにさらすこと。また、さらされること」となっています。
ここで使用するばく露とは、化学物質が溶け込んだ水の中に生物が生存しており、常に化学物質に「さらされた」状態となっているため、「ばく露」という言葉を使用している。

 

有害性の種類

水生環境急性有害性

水中にばく露した際、短期間で生物に引き起こされる有害性のこと

水生環境慢性有害性

水中にばく露した際、すぐには有害性が確認できないが、水生生物のライフサイクルに対応した期間を経て、生物に悪影響を及ぼすような有害性のこと

 

溶剤の魚毒性

溶剤の魚毒性は、データがあればSDS(製品安全データシート)に表記されます。
SDSには、どんな魚類を用いて、どの程度の数値結果が出たかが表記され、データがないもの(測定していないもの)については「情報なし」という表記になっています。

表記例

アセトン

水生環境急性有害性:魚類、ファット LC50 >100mg/L/96H
水生環境慢性有害性:難水溶性でなく(水溶解度 1.00×106mg/L)

トルエン

水生環境急性有害性:甲殻類 ブラウンシュリンプ EC50  3.5mg/L/96H
水生環境慢性有害:情報なし。

メタノール

水生環境急性有害性:
魚類(ブルーギル)での96時間LC50 = 15400mg/L(EHC 196, 1998)、
甲殻類 (ブラウンシュリンプ) での96時間LC50 = 1340mg/L(EHC 196, 1998)

水生環境慢性有害性:
難水溶性でなく(水溶解度=1.00×106mg/L(PHYSPROP Database、2005))

※三協化学株式会社 SDS参考

 

試験後の魚類はどうなるのか?

試験後、魚毒性により死亡した個体と生存した個体の2種類が残ります。
試験機関によっても対応は異なりますが、死亡した個体は死亡時にその都度取り除かれ、供養されます。
生存した個体は、すでにばく露された化学物質を体内に取り込んでいる可能性があるため、次の試験に回すことはできません。
そのため、試験後は安楽死などをさせることが多いようです。

 

結局、どんな時に行う試験なのか?

特に化学製品は、河川や海の近くで使用されることもあり、廃水として流れることもあります。
流出してしまったり、あるいは廃水として流した際、水生生物に影響があると問題になるため、あらかじめ試験をする必要があります。
魚毒性試験は、上記のような場所で使用される化学製品が、製品化される前に行われるべき試験です。

 

過去の魚毒性にまつわる事件

天津浜海新区倉庫爆発事故(2015年8月、中国)

2015年8月に起きた天津の爆発事故では、爆発により港にあった化学物質が大量に川に流れ込みました。
爆発の現場から6キロ離れた川で魚の大量死が見つかっています。
もともと水門の影響で富栄養化が進み、気温が上がる夏場に魚の大量死がよく起こる地域だったそうですが、

化学物質の影響を危惧して調査を進めたところ、爆発が起きた付近の汚水からは最大で基準値の800倍のシアン化ナトリウムが検出されています。
詳しい原因は明らかにされていないものの、化学物資による魚毒性の影響で大量死が起きた事件の一つとして考えられるでしょう。

古綾瀬川での大量死(2017年11月、日本)

2017年11月に埼玉県草加市にある古綾瀬川で魚の大量死が発生しました。
川はエメラルドグリーンになっており、100匹以上の魚が死んでいます。
近くの工場から出た塩化銅が原因でした。塩化銅を貯蔵していたタンクに亀裂が入り、流出していたのです。
塩化銅のSDSには、

水生環境有害性(急性):魚類(ニジマス)の96時間LC50=0.018mg/L(ECETOC TR91、2003)から、区分1とした。
水生環境有害性(長期間):急性毒性が区分1、金属化合物であり水中での挙動および生物蓄積性が不明であるため、区分1とした。

と書かれており、魚毒性があることがわかります。
製品を使用する前に、安全データシートを確認することがいかに大事なことか改めてわかりますね。

 

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