GHSとは
GHSの登場
有機溶剤をはじめ、化学品の多くは無色透明の液体 か白色の粉末 です。
ベテランさんはにおいをかげばある程度分かる人もいますが、見た目で区別が付きづらいというのが、化学品業界の長年の悩み事の1つです。
そのため、容器にラベルなどの目印がないと、その物質が何なのかを調べるのに大変な手間と時間がかかってしまいます。
海外を相手に化学品を扱う場合はもっと複雑です。
言語が異なるだけでなく、同じ物質でも国ごとにラベルに表記している内容や書き方がバラバラで、それがどんな物質なのか、どのように取り扱ったらよいのか分からなければ、一歩間違えれば事故に繋がり、死に繋がることもあるでしょう。
そこで2003年、国連が中心となって化学物質の危険有害性に関する世界共通の情報提供の仕組み を作りました。
これが「GHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals/ 化学品の分類および表示に関する世界調和システム)」 です。
GHSの登場によって変わったこと
GHSが登場したことによって、ラベルの表示や、安全データシート(SDS)の提出、物質の有害性などを、国際的に統一した基準で表示することが義務付けられました。
化学品を売る側は、化学品を正しく分類して、SDSを提供したり、ラベルに正しく表示を行うことが義務となり、化学品を使う側は、職場で使用される化学品について、労働者に正しい情報(SDSに基づいた正確な情報)を提供することが定められました。
GHSの分類
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安全データシート(SDS)について
有機溶剤に関する危険有害性について、区分とそれに対するシンボルマーク、注意喚起語などをまとめます。
GHSのシンボルマークの意味と、SDSについては、上の記事で既に触れていますので、そちらをご参照ください。
引火性液体
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1
極めて引火性の高い液体および蒸気
引火点が23℃未満で初留点が35℃以下
2
引火性の高い液体および蒸気
引火点が23℃未満で初留点が35℃を超える
警告
3
引火性液体および蒸気
引火点が23℃以上60℃以下
なし
4
可燃性液体
引火点が60℃を超え 、93℃以下
急性毒性
経口
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1
飲みこむと生命に危険
LD50≦5mg/体重(kg)
2
5≦LD50<50mg/体重(kg)
3
飲みこむと有毒
50≦LD50<300mg/体重(kg)
警告
4
飲みこむと有害
300≦LD50<2000mg/体重(kg)
なし
5
飲みこむと有害のおそれ
2000≦LD50≦5000mg/体重(kg)
経皮
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1
皮膚に接触すると生命に危険
LD50≦50mg/体重(kg)
2
50≦LD50<200mg/体重(kg)
3
皮膚に接触すると有毒
200≦LD50<1000mg/体重(kg)
警告
4
皮膚に接触すると有害
1000≦LD50<2000mg/体重(kg)
なし
5
皮膚に接触すると有害のおそれ
2000≦LD50≦5000mg/体重(kg)
吸入:蒸気
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1
吸入すると生命に危険
LC50≦0.5(mg/L)
2
0.5≦LC50<2.0(mg/L)
3
吸入すると有毒
2.0≦LC50<10.0(mg/L)
警告
4
吸入すると有害
10.0≦LC50<20.0(mg/L)
なし
5
吸入すると有害のおそれ
2000≦LD50≦5000mg/体重(kg)
吸入:粉じんおよびミスト
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1
吸入すると生命に危険
LC50≦0.05(mg/L)
2
0.05≦LC50<0.5(mg/L)
3
吸入すると有毒
0.5≦LC50<1.0(mg/L)
警告
4
吸入すると有害
1.0≦LC50<5.0(mg/L)
なし
5
吸入すると有害のおそれ
2000≦LD50≦5000mg/体重(kg)
皮膚腐食性・刺激性
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1A
重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷
GHS国連文書 仮訳改定6版 第3.2章
1B
1C
警告
2
皮膚刺激
なし
3
軽度の皮膚刺激
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性
呼吸器感作性
皮膚感作性
生殖細胞変異原性
発がん性
生殖毒性
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1A
生殖能または胎児への悪影響のおそれ
GHS国連文書 仮訳改定6版 第3.7章
危険
1B
警告
2
生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い
なし
(授乳区分)
授乳中の子に害を及ぼすおそれ
特定標的臓器・全身毒性
単回ばく露
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1
臓器の障害
GHS国連文書 仮訳改定6版 第3.8章
警告
2
臓器の障害のおそれ
警告
3(気道刺激性)
呼吸器への刺激のおそれ
ヒトに対する一時的な刺激性作用の証拠がある
警告
3(麻酔作用)
眠気またはめまいのおそれ
ヒトまたは動物に対する一時的な催眠作用の証拠がある
反復ばく露
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1
長期または反復ばく露による臓器の障害
GHS国連文書 仮訳改定6版 第3.9章
警告
2
長期または、反復ばく露による臓器障害のおそれ
吸引性呼吸器有害性
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
危険
1
飲み込み、気道に侵入すると生命に危険のおそれ
GHS国連文書 仮訳改定6版 第3.10章
警告
2
飲み込み、気道に侵入すると有害のおそれ
水性環境有害性
急性
慢性
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険有害性情報
判定基準
警告
1
長期的影響により水生生物に非常に強い毒性
GHS国連文書 仮訳改定6版 第4.1章
2
長期的影響により水生生物に毒性
なし
3
長期的影響により水生生物に有害
4
長期的影響により水生生物に有害のおそれ
GHSシンボルの例外規定
シンボルは、該当する危険有害性区分に従って記載するのが原則ですが、一部例外があります。
例外の例
例外1
(どくろ) がある場合、(感嘆符) は除外される
例外2
(腐食性) か、 (感作性の健康有害性) がある場合、 (眼と皮膚に関する感嘆符) は除外される
GHSの分類と毒劇法の分類
単体の化学物質のGHS分類と、毒物及び劇物取締法(毒劇法)を照らし合わせると、おおよそ下記のようになっています。(必ずしも一致するわけではありません)
急性毒性
GHS情報
毒劇法情報
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険
1
医薬用外毒物
2
3
医薬用外劇物
警告
4
毒劇法規制対象外
なし
5
皮膚腐食性・刺激性
GHS情報
毒劇法情報
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険
1A
医薬用外劇物
1B
1C
警告
2
毒劇法規制対象外
なし
3
眼の重篤な損傷性・刺激性
GHS情報
毒劇法情報
マーク
注意喚起語
危険有害性区分
危険
1
医薬用外劇物
警告
2A
毒劇法規制対象外
なし
2B
GHSに沿ったラベルの例
作成時は、GHS国連文書を参考にすることをお薦め致します。
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