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化学用語解説

2018.01.09

自動車の塗料について ~自動車塗装の過去~

自動車の塗料について ~自動車塗装の過去~

 

自動車塗装の歴史

昔は塗料が悪かったので錆が浮いたり白化した!?

日本で「大衆車」と呼ばれる車が発売された1966年、車を手に入れたら最初にすることは、水洗い後に乾かした塗装表面にワックスを塗ってその後で綺麗な布で拭き取り艶を出すことでした。
理由は2つ。

①綺麗に見せること
②錆を防ぐこと

塗料の話ではありませんが、当時のギア切削技術が低かったために、数か月“慣らし運転”という急加速などでエッジの摩耗が適切に出来上がっていないギア歯を守る運転が(メーカーがして下さいと言っていたわけではありませんが、運転者の常識として)要求されていました。

同様に塗装技術とペイント材料が今より悪かったので、塗膜が紫外線に弱く、塗膜表面にある(ペンキが乾燥するときにできた)ピンホールが錆を発生させる原因となってしまっていたことから、ワックスがけの必要があったのです。

最初はワニスを家具職人が刷毛で塗った

車の始まりは、18世紀フランスで作られた、蒸気自動車です。
19世紀末までにガソリンエンジンの車がドイツで完成していましたが、これらにはシャーシと座席は有ってもボデーという物がほとんどないので、ボデー付きの量産車と言えば、1907年のT型フォードが最初でしょう。
当時でも鉄を錆から守るために何か塗料を塗るという知識は有りました。

問題は表面を仕上る塗装工程で使用したワニス(shellac)は不透明度がやや劣っていたため、被覆には数多くのコーティングが必要で、乾燥に数週間かかりました。
完成までに40日かかったと資料に出ています。
彼らは主に暗い色になる傾向のあるインク顔料を使用していました。

何故仕上塗装に、わざわざ時間のかかるワニスを使ったのでしょう。
それは、当時ワニスは馬車の外装で使われていたので『こういう場合はワニスだろう』と誰かが使ったからです。
当時はこのように馬車の延長線に自動車があり、馬車から引き継いでいる塗料や部品が多くありましたが、今では自動車(特にトラック)が馬車から引き継いでいる代表部品は板バネ・サスペンションくらいに減っています。

車のオーナーも自分が刷毛で再塗装した

当時の自動車コーティングは、最初にも書いた通り紫外線に弱く、時間が立つと乾燥して脆くなるという弱点がありました。
塗装作業そのものはそれほど長くはかからなかったので、当時車の所有者は、馬毛や豚毛刷毛の刷毛で自らが車を再ペイントしました。

 

ヘンリー・フォードは1908年当時、一番良い色は黒だと信じていた。

フォード「顧客は、黒色であれば、どんな色でも描かれたモデルTを得ることができます!」

フォードは、黒の塗料が唯一の実用的な自動車用塗料であると考えていました。
もちろん、フォードがモデルTに用いた黒いペイントは、実際には「自動車」用/専用のペイントではなく、20世紀初めに利用可能だった既存のペイント技術:バインダーとしての天然アマニ油樹脂をベースにした塗料です。

フォードの黒色塗料はモデルTに手塗りで塗装され、最終的に完成まで約1週間かかりました。
これは、黒塗料が利用可能な他のすべての色よりも速く乾燥したにもかかわらず、Fordの革新的な大量生産プロセスでは生産のボトルネックがひどくなってしまったからです。
最終塗装工程で車が倉庫に溢れる事態が発生してしまいます。

オレゴン州のトレドでドクター・デヴィビスがスプレーガンを発明

今でいう耳鼻科の医師が噴霧器を発明して蒸気の形で薬を散布したのを流用したのが、塗装用スプレーガンです。

1920年代にニトロセルロースのラッカーがつくられた

第一次世界大戦が終わり、ニトロセルロースの塗料が黒以外の色でも作られるようになりました。
乾燥が早いので刷毛で塗っていては間に合わないニトロセルロース塗料ですが、ほぼ同時期に発明されたスプレーガンのおかげで難なく塗布できるようになります。

フォードAAトラックは研磨仕上げが無いのでくすんでいる

1920年代には、スプレー装置とニトロセルロースラッカーとプライマーを組み合わせて開発し、塗装と乾燥時間を1週間以下に短縮できるようになります。
塗装に要する時間が大幅に短くなりました。
しかし時間短縮できたとはいえ、依然として研磨は手加工で、労働集約的でした。
1930年代のモデルAAフォードトラックは、その時間のかかってしまう研磨作業を省き、光沢のない、研磨されていないラッカー仕上げで作られています。

時間の経過イメージ

1950年代にはアクリルラッカーに代替わり

有機ベースのニトロセルロースラッカーは、1950年代後半にはより耐久性のあるアクリルラッカーと合成樹脂であるプライマーに変更されていきます。

1970 年代後半、水溶性に切り替えが始まり、最初はトラブル続出!!

1970年代後半から1990年代初めにかけて大部分の自動車メーカーやトラックメーカーが新しい水系システムに切り替えはじめます。
ただ、なにせ新しい技術で、切り替え間もないこの期間、塗装クリアコートの剥がれリコールが多く発生し多くの車が再塗装されることになりました。

塗料メーカーはすぐにそれらの問題を解決。
新しい仕上げは以前の塗装に比べ耐久性も向上し、今は自分の車にワックス掛ける人はほとんどいません。

現在の主たる課題は、環境を守る/破壊しない塗料・塗装法の開発・使用

VOC(揮発性有機溶剤)法という法律/規制が世界中で有ります。
VOCは、環境や生き物に有害であると考えられる塗料や溶剤に含まれる化学物質である揮発性有機化合物です。
日本でも環境省はVOCの排出抑制対策の進捗状況を把握するにあたり、2006年から排出量と削減量を調査しています。

自動車組立工場では、塗装作業が設備全体の半分のスペースを占め、多くのエネルギーを使用し、大部分のCO2を生み出しています。
そしてVOC排出量も、塗装方式の改善はエネルギーコストを節約できます。
実際には、かなりの部分で規制基準は達成していますが、瑠璃色の地球の為には塗料メーカーと車メーカーには一層の努力が求められます。

 

塗装にも仕向け国仕様が有る

車には使われる環境が極寒のシベリア/アイスランドから、灼熱の砂漠まで(-30℃から60℃まで約100℃)、バッテリー、AC、オイルも仕様があります。
塗料で良く知られているのは、車の腹にあたる部分に塗る砂漠用塗料です。
砂を巻き上げることが多いので、自然のサンドブラスト状態が発生するので塗膜がはげただけでなく、鉄板迄削られるのを防ぐ目的でコールタールの様なクッション性を持つ塗料が腹とタイえぐりに塗られると聞きました。

これらは、かつて車のオーナー自ら刷毛で塗膜を再塗装したのと同様に、定期的なメンテナンスが必要です。

砂漠のイメージ写真

 

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