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化学規制
2025.04.17
皮膚等障害化学物質とは?該当物質や非該当製品、規制内容などを解説
労働安全衛生規則(安衛則)の改正で2024年4月1日から皮膚等障害化学物質等(1064物質)を製造、取り扱う場合は、不浸透性保護具(保護衣や保護手袋、保護めがねなど)の使用と、その保護具の管理業務についての責任者である保護具着用管理責任者の選任が義務化されました。
この記事では、皮膚等障害化学物質の考え方や、該当する具体的な物質、該当する物質を使う場合の制約、非該当物質についてわかりやすく丁寧に解説します。
目次
皮膚等障害化学物質等とは?
皮膚等障害化学物質とは、安衛則では「皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがあることが明らか」な化学物質と定義しています。
具体的には、皮膚刺激性有害物質と皮膚吸収性有害物質で成り立ちます。それぞれの定義は以下の通りです。
分類 | 定義 |
皮膚刺激性有害物質(744物質) |
GHS分類の結果や譲渡提供者から入手したSDSなどに書かれた有害性情報のうちで「皮膚腐食性・刺激性」や「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかで区分1になっている化学物質。ただし特化則等と別規則で、皮膚又は眼の障害を防ぐために不浸透性の保護衣等の使用が義務付けられているものをのぞく。 |
皮膚吸収性有害物質(196物質) | 皮膚から吸収される、または皮膚に侵入して健康障害を生ずる恐れが明らかな化学物質。ただし特化則等と別規則で、皮膚又は眼の障害を防ぐために不浸透性の保護衣等の使用が義務付けられているものをのぞく。 |
皮膚刺激性有害物質と皮膚吸収性有害物質の両方に該当する物質が124物質あるため、皮膚等障害化学物質は1064物質になります。
皮膚腐食性と皮膚刺激性、感作性の定義は、以下のようになっています。
・皮膚腐食性…皮膚が化学物質に触れることで、皮膚の組織が破壊されて時間を経ても回復しない性質
・皮膚刺激性…皮膚が化学物質に触れることで、一時的に皮膚が赤くなったり、かゆみを起こしたりするものの、一定の時間が経てば回復する性質
・感作性…ある物質にさらされることで、アレルギー反応を起こさせる性質。呼吸器感作性は呼吸器に影響を与え、ぜんそくなどを引き起こす。皮膚感作性は、皮膚に影響を与え皮膚炎などを引き起こす
確認方法としては、使用する製品の最新のSDSを確認してください。弊社のSDSであれば15項の適用法令に記載しています。以下は弊社のメタノールのSDSの例です。SDSは参照先のデータベースによって区分が変わることがあります。あくまで参考としてください。
皮膚等障害化学物質の一覧
皮膚等障害化学物質のうち主な有機溶剤は以下の通りです。
系統 | 品名 | 別名 | CAS番号 | 有機則 | 特化則 | PRTR |
アルコール系 | メタノール | メチルアルコール | 67-56-1 |
◯ |
✕ | ✕ |
NPA | ノルマルプロピルアルコール、1-プロパノール | 71-23-8 | ✕ | ✕ | ✕ | |
ノルマルブタノール | 1-ブタノール、ノルマルブチルアルコール | 71-36-3 | ◯ | ✕ | ✕ | |
イソブタノール | イソブチルアルコール、2-メチル-1-ブタノール | 78-83-1 | ◯ | ✕ | ✕ | |
ベンジルアルコール | フェニルメタノール | 100-51-6 | ✕ | ✕ | ✕ | |
ケトン系 | MEK | メチルエチルケトン、2-ブタノン | 78-93-3 | ◯ | ✕ | ✕ |
アノン | シクロヘキサノン、ケトシクロヘキサン | 108-94-1 | ◯ | ✕ | ✕ | |
塩化炭化水素系 | ODCB | オルト-ジクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン | 95-50-1 | ◯ | ✕ | ◯ |
炭化水素系 | ノルマルヘキサン | n-ヘキサン、ヘキサン | 110-54-3 | ◯ | ✕ | ◯ |
トルエン | メチルベンゼン | 108-88-3 | ◯ | ✕ | ◯ | |
デカヒドロナフタレン | デカリン | 91-17-8 | ✕ | ✕ | ✕ | |
リモネン | D-リモネン、(R)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン | 5989-27-5 | ✕ | ✕ | ✕ | |
エーテル系 | エチセロ | エチレングリコールモノエチルエーテル、エチルセロソルブ | 110-80-5 | ◯ | ✕ | ◯ |
ブチセロ | エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、ブチルセロソルブ | 111-76-2 | ◯ | ✕ | ◯ | |
メチセロ | エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ | 109-86-4 | ◯ | ✕ | ◯ | |
特殊溶剤 | DMF | N,N-ジメチルホルムアミド、ホルミルジメチルアミン | 68-12-2 | ◯ | ✕ | ◯ |
THF | テトラヒドロフラン、ジエチレンオキシド | 109-99-9 | ◯ | ✕ | ◯ | |
DMI | 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、ジメチルエチレン尿素 | 80-73-9 | ✕ | ✕ | ✕ | |
グリコールエステル | エチルセロソルブアセテート | 酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸2-エトキシエチル | 111-15-9 | ◯ | ✕ | ◯ |
アミン系 | モノエタノールアミン | 2-アミノエタノール、エタノールアミン | 141-43-5 | ✕ | ✕ | ◯ |
トリエタノールアミン | トリヒドロキシトリエチルアミン | 102-71-6 | ✕ | ✕ | ✕ | |
ジエタノールアミン | 2,2′-イミノジエタノール | 111-42-2 | ✕ | ✕ | ◯ | |
その他の工業用薬品類 | モルフォリン | モルホリン、ジエチレンオキシミド | 110-91-8 | ✕ | ✕ | ✕ |
DBP | フタル酸ジ-n-ブチル、ジブチルフタレート | 84-74-2 | ✕ | ✕ | ◯ | |
3-メチルピリジン | 3-ピコリン、β-ピコリン、m-ピコリン | 108-99-6 | ✕ | ✕ | ◯ |
皮膚等障害化学物質を取り扱う場合の制約
上記のような皮膚等障害化学物質やそれを含む製剤を製造したり、取り扱う業務に労働者を従事させる場合は、不浸透性の保護手袋、呼吸用保護具、保護眼鏡などの適切な保護具を着用する義務と保護具着用管理責任者専任の義務があります。

そるぶ
適切な保護具と、保護具着用管理責任者についてはそれぞれ、別記事「保護具とは?呼吸用保護具と保護手袋を中心にわかりやすく解説」と「保護具着用管理責任者とは?わかりやすく解説」で詳しく解説しているから、読んでみてね!
NPA(ノルマルプロピルアルコール)を取り扱う場合
皮膚等障害化学物質を取り扱うと具体的にどんな規制がかかるのか、NPAを例に見てみましょう。
保護具について
NPAを含む、皮膚等障害化学物質を使用する場合は、不浸透性の保護具を使用する義務があります。
以下の表は、保護具とJIS規格、保護具の例とその写真です。
保護具の種類 | JIS規格 | 保護具の具体例 | 保護具の写真 |
化学防護手袋(保護手袋) | JIS T 8116 | 重松製作所 化学防護手袋 37-176 | ![]() |
化学防護服(保護衣) | JIS T 8115 | 不織布防護服 MHPROTEX 2000+(シューズカバー付) | ![]() |
保護眼鏡 | JIS T 8147 | 理研オプテック ゴーグル 曇り止め G9-HF | ![]() |
化学防護長靴(履物) | JIS T 8117 | 重松製作所 化学防護長靴RS-2 | ![]() |
詳しくは以下の厚生労働省の資料を確認してください。
皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル
皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(概要)
上記のように皮膚等障害物質を取り扱う際は、必ずJIS規格に適合した保護具を使わなければいけません。
保護具着用管理責任者の選任
さらに、NPAを使用する場合、保護具の使用が義務となるため、保護具着用管理責任者の選任も必要です。
同責任者は、適切な保護具の選択と保護具の適正使用の指導、保護具の保守管理をしなければなりません。
また、同責任者になれる人は、以下の図のように、化学物質管理専門家の要件に該当する、作業環境管理専門家の要件に該当する、労働衛生コンサルタント試験に合格した人などの要件に該当する人に限られます。
該当者がいない場合は保護具着用管理責任者教育の受講者の中から選定します。
皮膚等障害化学物質非該当品「エタコール3」とは?
弊社三協化学のエタコール3は、皮膚等障害化学物質を含まない変性アルコールで、NPAを始めメタノールなど皮膚等障害物質を含む変性アルコールなどの各種アルコール系有機溶剤の代替品として使用できます。
皮膚等障害化学物質に該当しないため、不浸透性の保護具着用義務はなく、保護具着用管理責任者を選任する義務もありません。
エタコール3の詳細を知りたい方、エタコール3をお求めの方は、下記リンクよりお問い合わせください。
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