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化学規制
2025.01.29
中国の化学品(有機溶剤、洗浄剤、剥離剤等)に関する法令をわかりやすく解説
中国における化学品(有機溶剤、洗浄剤、剥離剤など)に関する法令や規則、制度は、複雑で難しいものとなっています。本記事でわかりやすく丁寧に解説しますので、ぜひお読みください。
目次
中国の法体系
中国の法体系は、上から順に憲法▶法律▶行政法規▶地方性法規▶自治条例・単行条例▶行政規則(行政規章)の序列です。
憲法は最高法規性を有し、一切の法律や行政法規、地方性法規、自治条例・単行条例、行政規則は憲法に抵触してはならないとされています。
法律は最上位の立法機関である全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)または、全人代常務委員会が制定し、「~法」と呼ばれることが多いです。
行政法規とは、最上位の行政機関である国務院(日本の内閣に相当)が制定するもので、「~条例」や「~規定」「~弁法」と呼称されます。
地方性法規は一級行政区か主要都市の人民代表大会かその常務委員会が、自治条例・単行条例は自治区や自治州、自治県がそれぞれ制定します。
行政規則は、国務院の各部門や一級行政区、主要都市の人民政府が法律に基づいて制定します。
また中国特有のものとして、最高人民法院(日本の最高裁判所に相当)と最高人民検察院(日本の最高検察庁に相当)による法律の具体的な適用についての司法解釈も法律に準ずるとされ、法的拘束力を持ちます。
国家標準(GB規格)
中国には国家標準(GB規格)、業界標準、地方標準、企業標準の4階層の標準があり、中国国家標準化委員会(SAC)と中国国家認証許可監督管理委員会(CNCA)が管轄機関として統括しています。
このうち国家標準は日本のJIS規格に相当するもので、中国語の略称である「国標」のピンイン表記がGuóbiāoとなることからGBともGB規格とも呼ばれます。
GB規格には、強制国家標準のGBと、推奨国家標準のGB/Tの2種類があります。
GBは準拠していないと生産・販売・輸入ができません。GB/Tはあくまで推奨の標準ですが、上位法やGBに引用されている場合は強制になります。
GBには、工業用洗浄剤のVOC含有量の最大値を定めたGB38508-2020などがあります。
そるぶ
推奨国家標準のGB/Tであっても、GBに引用されると強制になるから注意が必要だね!
新規化学物質環境管理登記弁法
新規化学物質環境管理登記弁法(生態環境部令第12号)とは、新規化学物質についての環境関連法規で、日本の化審法に相当します。
中国生態環境部が2020年4月29日に公布、21年1月1日に施行されました。
新規化学物質環境管理登記弁法は、EU(欧州連合)の化学物質に関する規則であるREACHになぞらえて中国版REACHとも呼びます。
具体的には中国現有化学物質名録に記載されていない新規化学物質を中国域内で、研究や生産、輸入、加工、使用する場合は申告が必要になります。
(※新規化学物質であっても他の法令で管理されている原薬を含む医薬品や農薬原体を含む農薬、動物用医薬品、化粧品、食品、食品添加物、飼料、飼料添加物、肥料などの成形品は対象外です)
申告には通常登記(年間10トン以上)と簡易登記(年間1~10トン)、届出(1トン未満)の3種類があり、それぞれ必要な書類と審査の流れが異なります。
法律に違反して、不正な申告をしたり、申告を行わなかったり、申請内容と違う使用をした場合は最高で罰金3万元が科されます。また以後3年間は申請を受理しません。
中国現有化学物質名録
中国現有化学物質名録とは、IECSC(the Inventory of Existing Chemical Substances Produced or Imported in China)とも呼ばれ、収録された物質は、新規化学物質のように中国で製造したり使用したり、中国に輸入したりする場合に申告をする必要ありません。
IECSCには、24年11月26日時点で、化学物質4万7047種類が収録されています。
危険化学品安全使用許可制度
危険化学品安全使用許可制度では、危険化学品安全管理条例(国務院令第591号)と危険化学品安全使用許可証実施弁法に基づいて、危険化学品安全使用許可適用業種目録に該当する業種(化学原料製造業、化学製品製造業、医薬製品製造業、化学繊維製造業)の化学工業企業は、危険化学品の使用量が法定基準(年間に塩素なら180トン、ガソリンなら7300トンなど)に達した場合は危険化学品安全使用許可証の取得が義務付けられています。
※燃料として危険化学品を使用する場合は対象外
申請には以下の条件が科されます。
・危険化学品の使用に係る安全管理規則制度及び安全操作規定を確立すること
・使用する危険化学品を取り扱う専門人員を有すること
・安全管理機構および選任の安全管理人員を有すること
・緊急対応事前案、緊急救援機材を有すること
・安全評価を行っていること
なお、許可証の有効期限は3年です。更新には有効期限満了3ヶ月前までに延長申請が必要です。
危険化学品
危険化学品とは、毒性や腐食性、燃焼性、助燃性などを持ち、人体や施設、環境に有害な化学品のことで、危険化学品目録としてリスト化されています。
同目録には2022年時点で2828物質が登録されています。これらの物質を規制する制度として上記の危険化学品安全使用許可制度と次に解説する危険化学品登録制度が実施されています。
危険化学品登録制度
危険化学品登録制度とは、危険化学品安全管理条例と危険化学品登録管理弁法に基づき、危険化学品目録に該当する化学物質や、危険化学品の判定原則に該当する化学物質を用いて製品を製造または輸入する場合その製品を危険化学品登録しなくてはならない制度です。
※危険特性が未確定の化学品は、中国政府が規定する資格を持つ危険性鑑定を委託する必要があります。
申請には以下の書類を揃えて、登録システムを通じて省級登録部門に申請します。
・危険化学品登録票
・化学品安全技術説明書…「化学品安全技術説明書内容と項目順序」(GB/T16483−2008)を遵守
・化学品安全ラベル…「化学品安全ラベル編纂規定」(GB15258−2009)を遵守。GB15258−2009はGHS分類に関する26項目の国家標準(GB20576〜20602-2006)の規定も一部引用している
・24時間対応の緊急相談サービス電話番号または緊急相談サービス委託書…専任要員が24時間担当する中国国内固定サービス電話を設置し、危険化学品事故の緊急相談サービスをユーザーに提供し、事故の緊急救援に偽日的指導と必要な情報支援を提供する義務があります。自ら設置できない場合は登録機関に委託する必要があります。なおこの電話番号を安全ラベルに表示しなければいけません。
・登録をする危険化学品の製品基準など
省級登録部門が上記の書類を基に、初期審査を実施し、通過したら登録システムで要求事項を記入し、登録資料を提出します。同部門は、現地調査をすることもあります。条件を満たせば登録資料を国家の登録部門に提出し、通過すれば、危険化学品登録証が発給されます。
登録証の有効期間は3年で、更新は期間満了の3か月前までに更新申請が必要です。
職業病防治法
職業病防治法とは、労働者が職業活動で、粉塵や放射性物質、その他の有毒、有害要因に触れることで起こる疾病(職業病)を予防、制御し、労働者の健康や関連する権益を守るために2001年に公布された中国の法律です。化学品に関する部分に絞って解説します。
使用者に職業病を発生させる恐れがある化学品(職業病危害因子)を提供する場合は、中国語の説明書の添付が必要です。
説明書には、製品の特性と主要成分、存在する有害因子、発生する恐れがある危害の影響、安全に使用するための注意事項、職業病の予防と治療、応急救援措置などの内容を記載することが求められます。製品の包装には、目立つ警告標識と中国語の説明も必要です。
また上記化学品を貯蔵する場所には、危険物の標識の設置しなければなりません。
中国国内で職業病の危害と関係がある化学材料を初めて使用、または中国国内に輸入する場合は、使用者または輸入者は、規定に従って、国務院関係部門の許可を得て、国務院衛生行政部門と安全生産監督管理部門に、その化学材料の毒性鑑定と関係部門の登録登記か輸入許可文書などの資料を届け出ることが求められます。
上記に違反した場合、安全生産監督管理部門が警告を出し、期限を定めて是正を命じます。
是正しない場合は、10万元以下の過料が科されます。
職業病危害因子
職業病危害因子には、トルエンやキシレン、ベンゼン、トリクロロエチレン、メタノール、エチルベンゼン、ベンジルアルコール、エチレングリコール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトンなど多くの一般的な有機溶剤が該当します。
易制毒化学品管理条例
易制毒化学品管理条例とは、麻薬の原料となる化学物質を規制し、麻薬製造を防ぐことを目的として2005年に公布されました。易制毒化学品(麻薬の原料になる化学物質)の製造や販売、購入、輸送、輸入、輸出には、中国当局への登録や許可が必要なります。
易制毒化学品は麻薬製造に使用できる主要な原材料の第1種と、麻薬製造に使用できる化学添加物の第2、3種に分かれており、一般的な有機溶剤ではアセトン、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、γ‐ブチロラクトンが第3種に指定されています。
劇毒化学品購買および道路輸送許可証管理弁法
劇毒化学品購買および道路輸送許可証管理弁法とは、劇毒化学品(危険化学品目録の右端の欄に剧毒と記載がある148物質)の購入や道路輸送の管理監督を強化する法令です。2005年に公布されました。規制内容の概要は以下の表の通りです。
種類 | 発行対象 | 発行機構 |
劇毒化学品購買証 | 危険化学品の生産企業、劇毒化学品の販売企業、その他の生産、科学研究、医療など分野で常に劇毒化学品を使う企業 | 所在地の区を設ける市レベル人民政府考案部門 |
劇毒化学品準購買証 | 劇毒化学品を臨時的に購入または使う企業 | 所在地の区を設ける市レベル人民政府考案部門 |
劇毒化学品道路輸送通行証 | 劇毒化学品の道路輸送が必要な企業 | 輸送目的地の県級以上の人民政府交通管理部門 |
劇毒化学品購入許可証を取得せずに劇毒化学品を購入したり、劇毒化学品道路通行許可証を取得せずに劇毒化学品を道路輸送した場合は、厳しく取り締まられ、処罰されます。
電器電子製品有害物質制限使用管理弁法(中国RoHS2)
電器電子製品有害物質制限使用管理弁法とは、電気電子製品の廃棄による環境汚染を減らし、環境と人の健康を保護することを目的とした法律です。電気電子機器に有害物質を使用することを制限する欧州連合(EU)の法令であるRoHS指令になぞらえて中国RoHS2とも呼びます。
具体的な規制の内容は以下の表の通りです。
項目 | 内容 |
規制対象物質 | 鉛およぼその化合物(0.1wt%) 水銀およびその化合物(0.1wt%) カドミウムおよびその化合物(0.01wt%) 六価クロム化合物(0.1wt%) ポリ臭化ビフェニル(PBB)(0.1wt%) ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)(0.1wt%) 国が指定するその他の有害物質(0.1wt%) |
規制対象製品 | 定格転圧AC1000V/DC1500V以下の電気電子製品:電流あるいは電磁場により稼働するか、電流および電磁場の生成・伝送・測定を目的とする定格電圧が直流の場合は1500ボルト以下、交流の場合は1000ボルト以下の製品および周辺製品。ただし、電力の生産・伝送・配分に関わるものは除く。 |
規制内容 | ・生産、輸入した電気電子製品における規制対象物質の含有量と、環境保護使用期限を表示 ・電気電子製品有害物質使用制限基準到達管理目録に記載された合格評定制度に基づいて管理 |
対象製品としては、通信設備やテレビ、コンピュータ、家電、電子工具、医療用電子設備、照明、ゲーム機など幅広い製品が該当します。
同法の具体的な義務の内容は以下の通りです。
・生産者…製品における有害物質使用制限と自己検査をし、製品が同法の要求に合致することを保証する
・輸入者…輸入製品の有害物質検査を担当し、同法の規定に合致することを保証する
・販売業者…販売した製品が同法の要求に合致することを保証し、政府に協力して監督、管理、検査を実施する
危険貨物道路運輸安全管理弁法
危険貨物道路運輸安全管理弁法とは、危険貨物の輸送について、託送人の責任を明確化し、分類、ラベルと標識、託送リスト、危険貨物の例外数量・有限数量および運送の際の包装、最大数量などの内容を定めています。具体的な規制内容の概要を見ていきます。
託送人は危険貨物を道路で輸送する作業をする際は、検査・記録精度、安全教育、設備管理などの安全生産管理制度を作り、従業員に定期的な安全教育訓練を実施しなければいけません。
従業員は教育訓練を受けたあと、審査に合格しないと作業できません。
また教育訓練・審査記録を作り、12ヶ月間保管しなければいけません。
託送人は法に基づいて危険貨物道路運送許可を取得している運送企業に運送を委託する必要があります。また、託送人は運送人に託送リストを提出することが求められます。
託送リストには、危険貨物の託送人や運送人、荷受人、荷役人、始発地、目的地、危険貨物の類別、項別、品名、コード、包装や規格、数量、応急連絡電話、危険貨物の危険特性、運送注意事項、応急措置、消防措置、漏洩が発生した際の緊急対応、環境汚染対応措置などを記載する義務があります。
長江保護法
長江保護法とは、中国最長の大河である長江の流域の生態環境保護と回復、資源の合理的かつ効率的な利用を促進し、自然と調和のある共存と持続的発展のため制定された法律です。
化学工業分野に絞って概要を見ていきます。
長江の本流と支流の川岸から1km以内には、化学工業団地やコンビナートの建設、拡張は禁止です。
また危険化学品目録に強毒性化学品と記載がある物質と、内陸河川の禁輸危険物質のカタログに記載された有毒化学品を管轄内の長江流域で内陸水路を利用した輸送も禁止です。
さらに、長江の河口に位置する上海港では、同法の規定により、上海港に荷揚げする危険物は、その成分とCAS番号が100%開示された中国語SDSと、製品に中国語GHSラベルの貼付が義務付けられています。
まとめ
ここまで見てきたように、中国における化学品に関する法制度は極めて複雑で難解です。
詳しく知るには原文は中国語のためより理解が難しくなります。
下の別記事で解説していますが、中国へ化学品(有機溶剤や洗浄剤、剥離剤など)を輸出すると、船か飛行機を使わなければならず、通関も厳しいため高いコストと手間がかかります。結果として、現地で製造した方がコストと手間を削減できます。
そのため弊社では中国広東省東莞市に製造拠点を設け、現地で製品を製造する体制を整え、中国語にも対応しております。
同製造拠点では、一斗缶やドラムの荷姿の単体有機溶剤や洗浄剤、剥離剤、シンナー類を製造しています。
※界面活性剤や添加剤を添加するような作業はできないため、塗料や接着剤には対応しておりません。
中国への化学品の輸出方法と、弊社現地製造拠点については別記事「化学品(有機溶剤、洗浄剤、剥離剤など)の中国への輸出方法」で詳しく説明しておりますので併せてお読みください。
有機溶剤などの化学品を中国で使いたいとお考えの方は、下記リンクから弊社までお問い合わせください。
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