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化学規制
2025.01.10
保護具とは?呼吸用保護具と保護手袋を中心にわかりやすく解説
作業中の事故などの危険から労働者を守るために身に付ける保護具。
保護具には防じんマスクや防毒マスクなどの呼吸用保護具をはじめ、保護手袋や保護帽、保護衣、保護長靴、保護メガネなどさまざまなものがあります。
労働安全衛生法では、一定の作業、環境下では、事業者は労働者に保護具を装着させなければならないと定めています。
本記事では保護具を全て解説することはできないため、呼吸用保護具と保護手袋に絞って順番に概要を解説します。
保護具着用管理責任者は、化学物質のリスクアセスメントの結果、保護具を使うことを決めた場合や作業環境測定の結果、第3管理区分に分類された場合に、選任が義務付けられる保護具着用管理責任者については下記の別記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
目次
呼吸用保護具とは?
呼吸用保護具とは、人体に悪影響が出る恐れがある環境空気中で、呼吸の保護目的で着用する個人用の保護具です。
大別すると、ろ過式(防毒マスク、防じんマスク、電動ファン付き呼吸用保護具)と給気式(エアラインマスク、ホースマスク、自給式呼吸器)の2種類があります。
給気式は作業している場所の空気を吸わないため酸素濃度が18%以下の酸素欠乏環境でも使えます。
一方で、ろ過式は空気中の粉塵などの有害物を除去できますが、酸素を供給できないので酸素濃度18%以下の酸素欠乏環境では使えません。ろ過式マスクの説明は以下の通りです。
マスクの種類 | 参考画像 | 特徴 |
防毒マスク | 有害ガスなどを吸収缶で除去 | |
防塵マスク | 粒子状物質を濾過材で捕集 | |
電動ファン付き呼吸用保護具 | 電動ファンによって環境空気を吸引し、その中の有害物質をフィルターまたは吸収缶で除去、着用者に送風 |
そるぶ
有機溶剤や洗浄剤、剥離剤を使用している環境では、防毒マスクを使用するよ。
一般的な不織布のマスクでは、有機溶剤のような有害ガスは防げないので注意してね。
フィットテストとは?
呼吸用保護具は顔に密着していないと隙間から空気が漏れ、最適な性能を得られません。
密着性を確認するテスト(フィットテスト)を実施することで、呼吸用保護具のサイズや形状、装着状態が適切であるか確認できます。
フィットテストには定量的フィットテストと定性的フィットテストの2種類があり、いずれかを1年間に1回以上実施する必要があります。
定量的フィットテスト
マスク内外の粒子数を比較することで、マスクをしっかりと密着できているか確認する方法で、測定装置を使って数値として計測します。
数値として結果がでるため客観的に判定できますが、測定機器を購入(100~150万円前後)したり、レンタルしたりして自社で実施するか、業者へ依頼して行う必要があり、手間とコストがかかります。
定性的フィットテスト
被験者が味覚や臭覚などの感覚によって検知できる、フィルターを透過しない試験物質を使って、試験物質を感じるかどうかを調べます。
例えばマスクを着けた作業者にフードを被せ、フード内にサッカリン溶液など甘みを感じるミストを噴霧します。
作業者が甘みを感じないことで漏れがないことを確認します。
3~5万円のキットも販売されており、定量的フィットテストよりも手軽に行えることが特徴です。
ただし、主観的なテストなため定量的フィットテストに比べると信頼性が下がります。
そるぶ
フィットテストをして、呼吸用保護具と顔面がしっかりと密着しているか確認しよう!
シールチェックとは?
上記のフィットテストは1年間に1回以上実施する必要があるものです。
対してシールチェックとは使用するたびに、毎回行う必要がある、面体と顔面の密着性を調べるテストです。
主に陰圧法と陽圧法がありますが、作業場などに備え付けた簡易機器(面体内圧の変動を調べる機器など)などで、簡易的に密着性を確かめる方法もあります。
陰圧法によるシールチェック
面体を顔面に強く押し付けないように、フィットチェッカーを使って吸気口を塞ぎ、息をゆっくり吸って密着性を調べます。このとき空気が外から面体の内側に流入せず、面体が顔に吸い付くことが確認でれば密着性は良好です。
フィットチェッカーがない場合は、手のひらで濾過材の吸気口を塞いで確認しましょう。
※面体を強く押し当てると、このときだけ密着性が良くなってしまうので注意しましょう
陽圧法によるシールチェック
面体を顔面に強く押し付けないように、フィットチェッカーを使って吸気口を塞ぎ、息を吐きす。空気が面体から流出せず、延滞が膨らめば密着性は良好です。
フィットチェッカーがない場合は、陰圧法と同様に、手のひらで濾過材の吸気口を塞いで確認しましょう。
※面体を強く押し当てると、このときだけ密着性が良くなってしまうので注意しましょう
保護手袋とは?
保護手袋とは、手や手首上部を化学物質や薬品から守ったり、切り傷ややけどなどさまざまな災害から守るための保護具です。
汚れ防止や滑り止めのための一般作業手袋や溶接溶断のための溶接用かわ製保護手袋などさまざまな保護手袋があります。
ここでは化学物質から守るための化学防護手袋を解説します。
化学物質の中には皮膚から吸収されて健康被害を起こす可能性が高いものも多く、化学防護手袋は、それらを取り扱うために化学物質を通しにくい(耐透過性)、浸透しにくい(耐浸透性)、劣化しにくい(耐劣化性)を持つ耐化学物質を考慮して製造されています。
素材別にゴム製とプラスチック製の2種類があります。
ゴム製手袋
ゴム製手袋には、素材として天然ゴム、クロロプレンゴン(ネオプレンゴム)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロンゴム)、ニトリルゴムなどがあります。
ゴム製手袋の特性 ※「▼」をクリックすると表が開きます
手袋の材質 | 長所 | 短所 |
天然ゴム | 耐酸、耐アルカリ、アルコール類、ケトン類に対応可。柔軟性、耐摩耗性があり、引き裂きに強い。寒冷地でも硬くなりにくい | 油脂、溶剤には溶ける |
クロロプレンゴム(ネオプレンゴム) | 耐酸、耐アルカリ、耐油性、耐摩耗性、耐オゾン性、耐熱性あり。ガス透過性低い。天然ゴムより優れる。物理的にも化学的にもバランスが取れている | 温度が低下すると少し硬くなる。焼却するとダイオキシンが出る可能性がある |
クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロンゴム) | 高濃度の無機酸、塩酸、硫酸、硝酸、王水に最適。弱酸性であり強い浸透性のあるフッ酸にも適している。クロロプレンよりも耐酸性がある。 | 焼却するとダイオキシン発生の可能性あり |
ニトリルゴム | 手袋素材の中で最も耐油性に優れる。低濃度の無機酸、アルカリの他、アルコール、エーテルに対応可。突き刺しに強く、耐摩耗性や耐劣化性、ガス透過性も低い | やや柔軟性に欠け、低温で硬くなる |
ポリウレタンゴム | 耐油、耐溶剤性あり。有機溶剤などに広く用いられる。耐摩耗性や耐引裂性が良好。耐熱性は80℃ほどだが、-60℃でも硬くならないため耐寒性に優れる | シクロヘキサノンやDMF、テトロヒドロフラン、塩素を含むトリクロルエチレン、塩化メチレンなどには対応不可 |
ブチルゴム | エステルやケトン、アミン系に対応可。耐熱性や耐オゾン性、ガス透過性は低い | 芳香族有機溶剤や塩素を含む有機溶剤には対応不可 |
フッ素ゴム | 合成ゴム中最高の300℃まで耐えれる耐熱性を持つ。有機溶剤では、芳香族、塩素を含む有機溶剤に対して優れる | エステルやケトン、アミド系に弱い。メチルアルコールは対応不可 |
シリコーンゴム | 耐熱温度200~250℃、耐寒温度-50~-70℃と温度的に極めて優れている。メタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルアミド(DMF)、Nメチルピロリドンに対応可 |
プラスチック製手袋
プラスチック製手袋には、素材としてポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンなどがあります。
アコーディオン見出し ※「▼」をクリックすると表が開きます。
手袋の材質 | 長所 | 短所 |
ポリ塩化ビニル | アルカリ、低濃度の酸、耐油性では灯油まで耐えられる | シンナーなどの有機溶剤に弱い |
ポリビニルアルコール(PVA) | 広く有機溶剤用として使用可 | 水に弱く、75℃以上の温水に溶解する。そのため、水を含むアルコール類、吸湿性が強いDMFには対応不可 |
ポリエチレン(PE) | ほとんどの薬品に対して劣化が少ない | 破れやすく、熱に弱い、滑りやすい。伸縮性がないためフィット感がない |
弊社製品を取り扱う際のおすすめの手袋
一般的なゴム手袋は、一般的な有機溶剤に対して溶解してしまうため使用できません。
ほとんどの一般的な有機溶剤に対して溶解せず、比較的万能なものはポリエチレン(PE)製のものです。安価で使い捨てができます。
しかし、薄手のものは破れやすいため、比較的厚手のものを使うと良いでしょう。
また熱に弱く滑りやすい点に注意が必要です。
使い捨てではない手袋としてはダイヤゴム社が製造するポリウレタン製のダイローブ5000がおすすめです。DMFやNMPにはダイローブH201がおすすめです。
また製品によってはニトリルや塩ビのものも使用可能な場合もあります。
おすすめの手袋の種類 | 特性 | 対応する弊社製品 |
ポリエチレン(PE)製 | 使い捨て | 全て |
ニトリル製 | 使い捨て | 炭化水素(アロマ除く)、アルコール、グリコールエーテル(一部除く) |
塩ビ製 | 使い捨て | 炭化水素、アルコール、エステル(一部除く)、グリコールエーテル(一部除く) |
ダイローブH201(シリコーン製) | 再利用可能 | アルコール、DMF、NMP、グリコールエーテル(一部除く) |
ダイローブ5000(ポリウレタン製) | 再利用可能 |
炭化水素、アルコール、エステル(一部除く)、グリコールエーテル(一部除く) |
詳しく知りたい方は下記お問い合わせまでお気軽にご連絡ください。
弊社のメタルクリーナー#770で天然ゴム製とポリエチレン製の手袋を比較
実際に天然ゴム製手袋とポリエチレン製の手袋を、弊社のメタルクリーナー#770に5分ほど浸して、溶けるか実験しました。
すると下記の図のような変化が見られました。
下段のポリエチレン製手袋は何の変化も見られませんでしたが、天然ゴム製手袋は溶けてふやけてしまい形状が変わってしまいました。
※この結果を見るとメタルクリーナー#770が相当危険なものに思えるかもしれませんが、溶けてしまったのは、あくまでゴム製品との相性が悪いためです。
弊社の製品を取り扱う際は、天然ゴム製ではなくポリエチレン製など前述したおすすめの手袋を使うようにしてください。
保護具について知りたいこと、疑問点などがございましたらお気軽下記よりお問い合わせください。
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