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化学規制
2025.01.24
化学品(有機溶剤、洗浄剤、危険品等)の中国への輸出方法
中国へ化学品を輸出する方法を、有機溶剤を含んだ洗浄剤の輸出を例に紹介します。
結論としては現地で日本と同じものを製造した方が、手続きが簡単で、コストが安くなります。
記事の後半で弊社が中国で対応できる製品について紹介しております。
中国への輸出方法は複雑で、わかりやすくまとめて解説しているサイトもないため、なかなか理解することが難しいですが、この記事では、丁寧に解説するのでぜひ最後まで読んでみてください。
目次
中国への輸出手段は二つのみ
そもそも日本は島国であるため、中国を含む外国へ輸出するには、航空便(航空輸送)か船便(海上輸送)のいずれかで輸送する必要があります。国内輸送のようにトラックを使うわけにはいきません。
航空輸送と海上輸送のそれぞれの基本的な特徴は以下の通りです。
次の章からは、化学品の中国への輸送について、航空便と船便に分けて詳しく見ていきます。
航空便での化学品の輸出
航空便での貨物輸送には、旅客機の貨物室を使って人と一緒に運ぶ場合と貨物船用の飛行機である貨物機を使う場合があります。貨物機は機体全体が貨物スペースのため、当然、旅客機よりも多くの貨物、より大きな貨物を運ぶことができます。
日本から海外へ輸出する際の航空貨物の一般的な流れは以下の通りです。
①貨物の発送…貨物を空港の輸出ターミナルへ発送
②梱包…危険物の場合は有資格者による梱包※詳細は後述
③輸出ターミナルへ搬入…航空輸送ができるように梱包したら輸出ターミナルへ搬入
④貨物の検査とラベリング…航空機のスペースを予約するために、貨物の大きさと重量の計測します。航空貨物運送状番号が記載されたラベルを貨物に貼ります
⑤輸出通関と申告許可…税関に輸出申告する
⑥積み付け…貨物を航空機用の機器に積み付ける
⑦搭載・出発…航空機に搭載し、目的地へ離陸
航空便での中国への化学品の輸出について、弊社が検討したEMSとFedEx、OCS、フォワーダーを例に見ていきます。
EMS(国際スピード郵便)
EMSとは、国際郵便の一種である国際スピード郵便(Express Mail Service)のことで、世界120以上の国と地域に30kgまでの書類や荷物を、比較的安価に、早く送ることができるサービスです。また損害賠償制度もあり、万が一、荷物が壊れたなどの場合は、最高200万円まで保証される仕組みもある便利で安心なサービスです。個人でも法人でも利用できます。
世界各国の郵便事業体サービスを提供し、日本では日本郵便が取り扱っており、貨物機ではなく、JAL(日本航空)やANA(全日本空輸)などの一般の旅客機の貨物スペースを利用して運びます。
そのため国や地域によって大きさや重量の制限があり、中国へ送る場合は最大長さ1.8m以内、長さ+横周が3m以内、重さは30kgまでとされています。
しかし大きさと重量制限をクリアしたとしても、一般的な有機溶剤のように、「引火性液体」や「環境有害物質を含むその他の有害物質および物品」に分類されると、航空危険物に分類されるためEMSで送ることができません。
輸送したい商品の安全データシート(SDS)の第14項にUN番号が記載されていれば、航空危険物に該当します。
下の画像は弊社のメタルクリーナー#770のSDSです。
FedEx
FedExは、アメリカに本社を置く世界最大規模の総合航空貨物輸送会社で、1971年に設立されたフェデラル・エクスプレス・コーポレーション(Federal Express Corporation)が前身です。
EMSとは異なり、FedExでは自社専用の貨物機で輸送します。
空港で大きくFedExのロゴが入った飛行機をご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか?
世界の220の国と地域でサービスを展開しています。
危険物の輸出入に関しては、50以上の地域で対応可能で、40年以上の実績を持っていますが、中国向けの国際航空貨物危険物は通関が難しく受け付けていません。
OCS
OCSはANAグループの貨物輸送専門企業で、OCSはOverseas Courier Service(日本語訳:海外宅配便事業)の頭文字から取ったものです。
日本の大手新聞各社が海外の日本人や日系人へ新聞を届けるために1957年に共同で設立した海外新聞普及株式会社が前身で、2009年にANAグループになった際に現社名のOCSとなりました。現在は新聞や書籍以外にも雑貨や食料品まで扱っている総合物流企業です。
企業間のBtoBの輸送だけでなく、企業から海外在住の個人への輸送(BtoC)も取り扱っています。
主にANAの飛行機を使って輸送します。
中国への危険物の輸送に関しては問い合わせると「中国では化学品の輸入規制が厳しくなっているため、税関で廃棄される恐れがあることを承知すれば、送ることができます」との回答でした。
化学品のように危険有害性があることを示すGHSシンボルがある貨物は通関が厳しくなります。
下の図は弊社メタルクリーナー#770のSDSです。
フォワーダー
フォワーダーとは、貨物利用運送事業者とも言い、自らは輸送手段を持たずに飛行機などを利用し荷主と直接契約して貨物輸送をする事業者のことです。
複数の運送会社を利用することで、商品に最適な輸送手段で運ぶことができます。
航空機の手配や専門性の高い輸送関係書類の作成、通関業務、梱包、空港での貨物の保管、配送業務を請負ってくれます。
弊社がとあるフォワーダーに問い合わせたところ、中国への危険物の輸出は対応可能の回答でした。
危険物を航空便で輸出する場合の梱包
航空便で輸出する場合、日本国内で輸送するような梱包では不十分であり、一般の人が梱包してはいけません。
具体的にはIATA危険物取扱資格という専門の資格を持っている人が、IATA危険物規則書に従って危険物申告書、ラベルを貼るなどをする必要があります。
有資格者が社内にいたとしても、日本国内の輸送と比較して梱包の決まりが厳しく手間がかかります。
梱包も行うフォワーダーに依頼すると高額になることは避けれません。
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そるぶ
航空機での危険物の中国輸出は以下の理由で難しそうだね。
・多くの貨物輸送専門会社でも対応できない
・危険物の梱包は、資格がないとできない。
船舶での化学品の輸出
船舶輸送(海上輸送)の特徴は、飛行機よりも一度に大量に運べることや、コストが比較的安いというメリットの一方で、輸送時間が長いというデメリットもあります。
一般的な海上輸送の流れは以下の通りです。
①コンテナへの荷物の積み込み
②コンテナを港湾施設のコンテナヤードへ搬入
③輸出通関…税関に輸出申告
④本船積み込み
⑤出航
船便には、コンテナ1個を借り切るFCLと他の荷主の荷物とコンテナを分け合う混載のLCLの2種類があります。
それぞれを説明します。
FCL
FCLとは、Full Container LoadのことでフルコンやCY貨物とも呼ばれ、荷主がコンテナを1本借り切り、独占して輸送する手段です。
コンテナの大きさは大きく分けて20フィート(内寸:長さ5.86m、幅2.35m、高さ2.38m)と40フィート(内寸:12.03m、幅2.35m、高さ2.38m)の2種類があります。
一般的な20フィートコンテナではドラム缶が80本入ります。
料金はコンテナの本数で計算するため、1つのコンテナに多くの荷物を入れた方がお得です。
具体的にはドラム缶40本以上を輸出する際は次に説明する混載(LCL)よりも割安です。
LCL
LCLとは、Less Than Container Loadのことで、海上輸送でコンテナ1本分に満たない量を輸送する際に他の荷主の貨物とコンテナ内で混載して輸送する手段です。
ここでは、広州港と上海港の2港でそれぞれ調査した例を解説します。
広州港
広州港は中国南部の広東省広州市の主要な港です。
ですが広州港では危険物倉庫の事情で危険物混載の受け入れていません。
上海港
上海港は中国最大の港湾の一つで、コンテナ取扱い量ではシンガポールや香港を上回り世界1位です。長江保護法の規定で、上海向け危険物は溶剤の成分とCAS番号が100%開示された中国語SDS、製品にも中国語GHSラベルの貼付が必須です。
※長江保護法…中国の華中地域を流れる全長約6300kmの大河である長江の流域環境保護のための中国の法律。その内容には、水質汚染が進む長江の環境を守るため汚染原因となる化学物質の規制も含まれる。
海上輸送で危険物を輸出する場合の梱包
航空輸送の場合と同様、送りたい化学品のSDSの第14項を確認しUN番号が記載されていれば、パッキンググループを確認し、該当のUNマーク(UN検査に合格した)が付いた容器(UN容器)を使うことが求められます。
加えて、クラスごとに表示すべきラベル(標札)と中国語のGHSラベルをそれぞれ貼付します。
中国へ化学品を輸出する場合に必要な書類
化学品を日本から中国への輸出すると、必要書類が多く複雑です。輸出する側(日本側)と輸入する側(中国側)に分けて見ていきます。
輸出者(日本側)に求められる書類
・輸出貿易管理令の非該当判定書
・日本語SDS、中国語SDS
・危険物容器検査証
・通常の輸出書類(Invoice,Packing listなど)
・その他、船会社や港湾会社から求められる書類
輸入者(中国側)に求められる書類
輸入者に求められる書類は、輸入するものが危険化学品に該当するか易制毒化学品に該当するかで異なります。
危険化学品に該当する場合
危険化学品とは、有毒性や腐食性、爆発性、燃焼性があり、人体や環境、施設に危害を与える化学品です。危険化学品の場合に必要な書類は以下のものです。
・危険化学品経営許可書…品物が危険化学品目録に該当する場合に必要:引火点60℃以下を含む
・危険化学品登記…目録記載の物質と危険化学品判定原則に該当する場合に必要
・中国語SDS、中国語GHSラベル…24時間対応の緊急連絡先電話番号を記載する必要がある
登記代行業者に依頼した場合は1商品約20~25万円、2商品以上は1商品あたり10~15万円ほどかかります。
易制毒化学品に該当する場合
易制毒化学品とは、「易制毒化学品管理条例」の付表に記載されている麻薬製造に使用できる原料と化学添加剤のことです。易制毒化学品は第1~3類に分かれており、第1類は麻薬製造に使える主な原料、第2、3類は麻薬製造に使える化学添加物です。
一般的な有機溶剤では、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、γ‐ブチロラクトンが第3類に指定されています。
易制毒化学品を取り扱うには中国当局の発給する許可証が必要です。許可を得るには中国当局への申請が必要です。
弊社は中国国内に製造拠点を持っています
ここまで見てきたように、日本から中国へ化学品を輸出しようとすると、手間と費用がかかります。
このため弊社では中国広東省東莞市に製造拠点を設け、現地で製品を製造する体制を整えています。
同製造拠点では、一斗缶やドラムの荷姿の単体有機溶剤や洗浄剤、剥離剤、シンナー類を製造しています。
※界面活性剤や添加剤を添加するような作業はできないため、塗料や接着剤には対応しておりません。
下記の表は、弊社現地製造拠点の対応エリアと対応可能製品です。
※上記製品以外でも一度、ご相談ください。可能な限りご対応いたします。
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出荷の際の包装規格は以下の表の通りです。
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