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化学規制

2024.12.05

CREATE-SIMPLE(クリエイトシンプル)とは?使い方などをわかりやすく解説

CREATE-SIMPLE(クリエイトシンプル)とは?使い方などをわかりやすく解説

化学物質のリスクアセスメント支援ツールであるCREATE-SIMPLE(クリエイトシンプル)。概要や使い方などをわかりやすく解説します。

CREATE-SIMPLE(クリエイトシンプル)とは?

クリエイトシンプルとは、Chemical Risk Easy Assessment Tool, Edited for Service Industry and MultiPLE workplacesのことで、厚生労働省が開発した化学物質のリスクアセスメント支援ツールの一つです。

化学物質のリスクアセスメントとは、職場で取り扱う化学物質の危険性有害性のリスクを評価し、その低減措置を検討することです。対象の化学物質等を取り扱う全ての事業者にリスクアセスメントを行うことが義務付けられています。
※危険性:設備・機器の爆発や引火の恐れ
※有害性:労働者の健康に悪影響を及ぼす恐れ
※対象の化学物質等:2024年12月現在、896物質あり、2026年には約2900物質になる

クリエイトシンプルは厚労省が推奨するツールであり簡単に曝露量の推定ができ、危険性と有害性のリスクを見積もることができます
同じく厚労省が開発したツールの「厚労省版コントロール・バンディング」は有害性のリスク見積もりしかできず、濃度基準値が設定されている物質は別途、曝露量の実測、推定が必要です。
リスクアセスメントを実施する際は、クリエイトシンプルでリスクを見積もり、より詳細なリスク見積もりが必要か判断することをお勧めします。

そるぶ

化学物質のリスクアセスメントについて詳しく知りたい方は、別記事「リスクアセスメントについて」で解説しておりますので併せて読んでね!

リスクアセスメント支援ツールとは?

リスクアセスメントの方法は事業者に任されていますが、所管する厚労省のクリエイトシンプルを始め、リスクアセスメントを支援するツールは複数あります。
代表的なものは次の通りです。

リスクアセスメント支援ツール
※「▼」をクリックすると表が開きます。
名称 評価する対象 特色
CREATE-SIMPLE(クリエイトシンプル) 危険性・有害性 サービス業や試験・研究機関などを含め、あらゆる業種の化学物質取扱事業者に向けた簡易なリスクアセスメントツール。取り扱い条件(取扱量、含有率、換気条件、作業時間・頻度、保護具の有無など)から推定した曝露濃度と曝露限界値(またはGHS区分情報)を比較する。
厚生労働省版コントロール・バンディング 有害性 ILO(国際労働機関)が中小企業向けに作成した作業者の安全管理のための簡易リスクアセスメントツールを、日本でも簡易的に利用できるように厚労省がWeb システムとして改良開発。化学物質の有害性情報、取扱物質の揮発性・飛散性、取扱量から簡単にリスクの見積もりが可能。

爆発・火災等のリスクアセスメントのためのスクリーニング支援ツール

危険性 化学物質や作業に潜む代表的な危険性やリスクを簡単に知ることに重きを置いた支援ツール。ガイドブックでは、化学物質の危険性に関する基本的な内容に加え、代表的なリスク低減対策も整理されているため、教科書として危険性の基礎を学ぶこともできる。
作業別モデル対策シート 有害性 主に中小規模事業者など、リスクアセスメントを十分に実施することが難しい事業者を対象に、専門性よりも分かりやすさや簡潔さを優先させ、チェックリスト、危険やその対策を記載したシート。リスクレベルは考えずに作業ごとに代表的な対策を記載。

上記の他にも厚労省が開発したツールや他の研究機関などで開発されたツールも公開されています。
厚労省の「職場のあんぜんサイト:化学物質のリスクアセスメント支援」で一覧を確認できます。

クリエイトシンプルの基本的な考え方

クリエイトシンプルはサービス業なども含め、あらゆる業種の方が使いやすいように、簡単な質問に答えるだけでリスク評価ができるようになっています。

クリエイトシンプルでは、化学物質の取り扱い量や含有量、換気条件、作業時間や頻度、保護具の有無などの取り扱い条件から曝露濃度(呼吸する空気中にその物質がどのくらい含まれているかの割合)を推定し、それと曝露限界値(労働者がその物質にさらされても健康上の影響がないとされる上限の値)を比較することでリスクを判定します。
実際の曝露濃度などを測定しなくても、結果がわかることが大きな特徴です。

クリエイトシンプルは、2018年3月に初版が公開されて以降、バージョンアップを重ね、最新版は24年7月に公開されたver.3.0.3です(24年12月現在)。
厚労省の「職場のあんぜんサイト:化学物質のリスクアセスメント実施支援」でバージョンアップを確認し、最新版を使うようにしましょう。

そるぶ

クリエイトシンプルは簡単な質問に答えるだけで、リスクアセスメントができるから、専門知識がなくても使えるよ!

クリエイトシンプルの使い方

クリエイトシンプルの具体的な使い方を見ていきます。

クリエイトシンプルのダウンロード

クリエイトシンプルを厚労省の「職場のあんぜんサイト:化学物質のリスクアセスメント実施支援:CREATE-SIMPLE」からダウンロードします。
リンク先ページを最下部までスクロールすると下記のような画面になります。クリエイトシンプルのダウンロード方法を解説する図

ダウンロードしたエクセルファイルを開くと下のようなメッセージが表示されることがあります。クリエイト・シンプルのコンテンツ有効化の図
「コンテンツの有効化」をクリックしてください。次に以下のような表示が出ることがあります。

クリエイトシンプルのセキュリティ警告文
クリエイトシンプルのファイルを保存しているフォルダを開き、クリエイトシンプルのファイルを右クリックし、プロパティを開きます。
プロパティの下部にセキュリティと書かれた部分があるので許可するのチェックボックスをクリックします。
再度、クリエイトシンプルのファイルを開くと使えるようになります。

クリエイトシンプルの構成

クリエイトシンプルはトップ、リスクアセスメントシート、実施レポート、結果一覧、製品DBの5枚のシートで構成されています。左下のシート名をクリックすると切り替えられます。クリエイト・シンプルのシート選択方法解説の図

トップ…トップページ。各シートの説明を記載。使用言語を日本語か英語か選択できる
リスクアセスメントシート…リスクアセスメントを実施するためのシート。このシートの質問に答えるとリスク判定が出る
実施レポート…リスクアセスメントの実施レポートを表示する。このシートを使ってリスク低減対策を検討することができる。印刷したり電子メールなどで従業員に知らせることも可能
結果一覧…リスクアセスメントを実施した結果の一覧を表示する。過去の実施結果を呼び出すこともできる
製品DB…事業場の取扱製品のデータベース。事業場内の取扱製品や化学物質の整理に活用できる。データベースに登録した内容をリスクアセスメントシートから呼び出し可能

クリエイトシンプルの使い方の例

試しにクリエイトシンプルを使って、リスクアセスメントをしてみます。
アセトンを試験器具の洗浄用途に1日、100mL以下使うと想定します。

クリエイトシンプルの左から2番目のリスクアセスメントシートを開きます。
質問項目がSTEP1~3の大きく三つに分かれているので、それぞれ答えを入力します。

STEP1対象製品の基本情報を入力しましょう。

クリエイト・シンプルの使い方STEP1の入力方法の解説の図
STEP1には、「タイトル」~「成分数」の9項目に分かれており、このうち必ず入力しなくてはいけないのは「リスクアセスメント対象」「性状」「成分数」の3項目です。それぞれ入力します。

リスクアセスメント対象は、「吸入」「経皮吸収」「危険性(爆発・火災等)」のうち判定したいものを選択します。特定のリスクのみを判定したい場合以外は全て選択することをお勧めします。

吸入は、その化学物質を口や鼻を通して吸い込んでしまった時のリスクを判定します。経皮吸収はその化学物質を手など皮膚から吸収してしまうリスクを推定します。危険性(爆発・火災等)は、爆発や火災のリスクを判定します。

成分数については、2024年4月のアップデートまでは一度に1物質までしか判定できませんでしたが、現在、成分数は10物質まで同時に判定することができます。混合物の場合でも含まれる成分を同時に判定できます。

そるぶ

「リスクアセスメント対象」「性状」「成分数」の3項目が入力必須だよ!

STEP2取扱い物質に関する情報を入力してください。

CAS番号がわかっている場合は「CAS RN」の欄に入力し「CAS RNで検索」をクリックすると物質名などが自動入力されます。アセトンのCAS番号「67-64-1」を入力すると下の図のようになります。
クリエイトシンプル入力方法の解説図CAS番号がわからないときは、「物質一覧から選択」をクリックすると、フォームが出るので「アセトン」と打ち込みます。するとアセトンを名前に含む物質の一覧が出るので、アセトンを選び「入力」をクリックすると、CAS番号から入力したと同様に、物質名などが表に入力されます。リスクアセスメント義務になっている物質については上記のように自動入力されますが、それ以外の物質はGHS分類などを手動で入力する必要があります。

含有率は手動入力の必要があります。今回はアセトンのみを取り扱う作業なので100%と入力します。

STEP3物質情報、作業条件等の入力

クリエイトシンプル入力方法解説の図上記のように、下に示したQ1~Q15までの質問に答えます。それぞれ右横からプルダウンメニューで入力できるため非常に簡単です。
Q1「製品の取扱量はどのくらいですか。」 ⇒ 1回あたり(連続する作業の場合は1日あたり)の製品の取扱量を入力しましょう
Q2「スプレー作業など空気中に飛散しやすい作業を行っていますか。」
Q3「化学物質を塗布する合計面積は1m2以上ですか。」
Q4「作業場の換気状況はどのくらいですか。」
Q5「1日あたりの化学物質の作業時間(ばく露時間)はどのくらいですか。」
Q6「化学物質の取り扱い頻度はどのくらいでうか。」
Q7「作業内容のばく露濃度の変動の大きさはどのくらいですか。」
Q8「化学物質が皮膚に接触する面積はどれぐらいですか。」
Q9「取り扱う化学物質に適した手袋を着用していますか。」
Q10「手袋の適正な使用方法に関する教育は行っていますか。」
Q11「化学物質の取扱温度はどのくらいですか。」
Q12「着火源を取り除く対策は講じていますか。」
Q13「爆発性雰囲気形成防止対策を実施していますか。」
Q14「近傍で有機物や金属の取扱いがありますか。」
Q15「取扱物質が空気又は水に接触する可能性がありますか。」
このうち、Q1~7は吸入に関する質問、Q8~10は皮膚吸収に関する質問、Q11~15は危険性(爆発・火災等)に関する質問です。

換気条件については以下の表を参考にしてください。判断できない場合はより換気レベルが低い側の条件を選択してください。

換気条件の説明 ※「▼」をクリックすると表が展開されます。
換気状況 補足説明や事例
特に換気がない部屋 ・換気がなく密閉された部屋であっても、人がいる環境なら、人の出入りにより最低限の自然換気があると考えられる
全体換気 ・窓やドアが開いている
・台所用小型換気性のような換気扇がある
・ビル内で全体空調がある
・ショッピングセンターや大きな作業場の一隅など、大空間の屋内の一部
工業的な全体換気、屋外作業 ・換気扇や排風機など工業的な全体換気装置がある
・屋外作業
外付け式局所排気装置 ・化学物質の発散源近くで上方向や横方向から吸引する場合(調理場の上部吸引フードなど)
・プッシュプル型換気装置
囲い式局所排気装置 ・実験室のドラフトチャンバーの中に化学物質をおいて作業する場合等
密閉容器内での取扱い ・密閉設備
・グローブボックス(密閉型作業箱)の中に化学物質をおいて作業する場合など
STEP4リスクの判定

STEP1~3の項目を入力した後、STEP4の「リスクを判定」をクリックします。
すると下記のようにリスク判定結果が表示されます。リスク判定結果の解説図

リスクはⅠ~Ⅳの4段階で判定されます。数字が大きいほど高いリスクを表します。SDSの危険性・有害性区分では数字が小さいほど危険性・有害性が高いため、勘違いしないように注意が必要です。
推定曝露濃度に大きな影響を与える保護具の着用は、実施レポートで情報を入力します。保護具の着用状況でリスクレベルは変わるので、この時点だけでリスク見積もりができたとは判断できません。

リスクレベル 説明
Ⅳ(大きなリスク) ・最優先でリスク低減措置を講じる必要がある
・通常の条件でリスクが顕在化する可能性が極めて高く、またリスクが顕在化したときの影響が重大(死傷、設備の破壊など)
Ⅲ(中程度のリスク) ・優先的にリスク低減措置を講じる必要がある
・条件が整えば、リスクが顕在化する可能性が高く、またリスクが顕在化したときの影響が大きい(死傷、設備の破壊など)
Ⅱ(小さなリスク) ・リスク低減措置を講じることを推奨する
・リスクが顕在化する可能性は高くないと考えられるが、条件によってはリスクが顕在化する恐れもあるため、注意が必要
Ⅰ(些細なリスク) ・必要に応じてリスク低減措置を講じる
・少なくとも現状を維持する努力を要するが、費用対効果などを考慮し、リスク低減措置の計画的な実施が望ましい

※吸入(8時間)は曝露限界値の1/2を基準として、Ⅱ-AとⅡ-Bに区分けされます。濃度基準値が設定されている物質を屋内で取り扱う場合、吸入(8時間)がⅡ-Bであれば確認測定等が必要です。
確認測定:曝露が濃度基準値以下であることを確認するための実測体(2024年4月から義務化)
濃度基準値:厚生労働大臣が定める曝露濃度の基準

有害性のリスク判定基準

クリエイトシンプルは、推定した曝露濃度と化学物質ごとの管理目標濃度を比較することで有害性のリスク判定しています。
推定にあたっては、まず取り扱い量や揮発性・飛散レベルから初期被曝濃度範囲を決定します。そこに化学物質の含有率、空気中に飛散しやすい作業かどうかなどの作業内容、換気条件、作業時間、作業頻度、防毒マスクや防じんマスクなど呼吸保護具の有無、接触面積、手袋の有無、教育を受けているかなどの要素ごとの補正係数をかけています。

中でも換気条件と呼吸保護具は判定結果に大きな影響を与えます。
例えば特に換気のない部屋では補正係数は4ですが、密閉容器内での取り扱いの補正係数は1000分の1となっています。
呼吸保護具(マスク)については、防塵マスクか防毒マスクか、電動ファンが付いているか否か、鼻と口だけ覆う半面景面体か、鼻と口だけでなく目を覆う全面景面体など細かい条件で変わってきます。
詳しく確認したい方は、「CREATE-SIMPLEの設計基準」をご確認ください。

そるぶ

換気条件と呼吸保護具は、リスク判定に大きな影響を与えるよ!

実施レポートの出力

実施レポートの出力の図

STEP4で「実施レポートに出力」をクリックすると実施レポートを出力します。
リスク低減対策の検討の項目では、下記の図ように簡単にリスクを減らす方法を検討できます。リスク低減策検討の図

下へスクロールすると下記のように対策後のリスクレベルが表示されます。低減対策後のリスク判定結果の解説図

そるぶ

検討した対策を実施し、リスクアセスメントの結果は労働者へ通知するようにしましょう!

 

「結果一覧」のシート

結果一覧のシートを開くと、下の図のように過去のリスクアセスメントの結果を確認できます。
結果の表示

クリエイトシンプルを使用する上で理解しておきたいポイント

・有害性

クリエイトシンプルは簡単に有害性のリスクを見積もることができるツールですが、ごく簡単に曝露量を推定しているだけなので実測した曝露量とは差があります。
曝露量の推定値は実測値より10倍以上高くなるように設計されており、状況によっては100倍以上の差が出ることもあります。(あくまで設計値であり、実測値が常に10分の1以下になるわけではありません)
また、何らかの曝露限界値(許容曝露限界値)が設定されていない物質は有害性区分から見積もるためリスクレベルが高い結果になる傾向があります。
クリエイトシンプルで有害性のリスクが高い見積もり結果が出た場合は、実測などでより詳しい見積もりをすることが重要です。

・危険性

危険性については、物質が保有している危険性が対象です。化学物質の反応、温度変化、圧力変化は考慮されていません。
危険性のGHS区分と取扱量に、取扱状況(着火源の有無、換気状況など、危害の発生頻度)を踏まえてリスクレベルを算出しています。
危険性のGHS区分が高いとリスクレベルも高い結果となりますので、安衛研リスクアセスメント等実施支援ツールなどで詳細なリスク見積もり・低減措置のの検討を行ってください。

 

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