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化学規制

2025.01.09

保護具着用管理責任者とは?わかりやすく解説

保護具着用管理責任者とは?わかりやすく解説

保護具着用管理責任者の選任が2024年4月1日から義務化されました。わかりづらい職務の内容や選任要件なども丁寧に解説します。

保護具着用管理責任者とは?

労働者に有害な物質や危険な現場で作業を行うために保護具を着用する必要がある事業場では、保護具の管理業務について責任者を選任する必要があります。
この責任者を保護具着用管理責任者と呼びます。労働安全衛生規則等の一部を改正する厚生労働省令が2024年4月1日に施行されたことで義務化されました。
保護具着用管理責任者の選任は公的機関へ届け出る必要はありませんが、事業場内に通知する必要はあります
選任は、必要性が生じた日から14日以内にしなければいけません。

保護具着用管理責任者は以下の①②の場合に選任する必要があります。
①化学物質のリスクアセスメントを実施した結果、呼吸用保護具や保護手袋などの保護具を使用することになったとき
②作業環境測定の評価結果が第三管理区分に区分された場合などで呼吸用保護具を使用することとなったとき
①と②では保護具着用管理責任者の職務内容に違いがあります。本記事では①のケースを中心に解説します。

※保護具については、呼吸用保護具と保護手袋を中心に別記事「保護具とは?呼吸用保護具と保護手袋を中心にわかりやすく解説」で丁寧に解説しているので合わせてお読みください。

そるぶ

そるぶ

化学物質のリスクアセスメントを実施し、保護具の着用を決めたら保護具着用管理責任者を選任する必要があるよ!

 

保護具着用管理責任者の選任が必要となるケース

新規でアセトンを用いる作業をすることになった場合を例に見ていきましょう。

アセトンを用いる作業を新たに行うことになったため、CREATE-SIMPLEでリスク見積もりを実施した。その結果、推定ばく露濃度吸入(短時間)が2000ppmとなりばく露限界値を超えていた。
そこでリスク低減措置として以下の順番に検討した。
①本質安全対策▶アセトンの代替を検討するも、他の物質ではうまく作業できず、代替はできなかった。
②工学的対策▶局所排気装置の設置を検討したがスペースの問題で設置できなかった。
③管理対策▶作業手順を見直したが推定ばく露濃度は変わらなかった。
④保護具の着用▶上記対策が難しかったため保護具を着用することとした

クリエイトシンプルを用いたリスク見積もりの例

このようにリスク低減措置として保護具の着用を決めたときには、保護具着用管理責任者を選任する必要があります。
リスク低減策としては上記の①~④の流れで検討します。詳しくは化学物質のリスクアセスメントとは?実施方法などをわかりやすく解説を参考にしてください。

保護具着用管理責任者の周知

選任が決まったら保護具着用管理責任者の氏名を関係労働者に周知しなければいけません。
周知方法としては以下のようなものがあります。
・事業場の見やすい箇所に掲示
・帽子や腕章などを着用させる
・事業場内部のイントラネットワーク環境を通じて展開

保護具着用管理責任者の職務

リスクアセスメントの結果に基づき選任された保護具着用管理責任者の職務は、①保護具の適正な選択、②労働者に保護具を適正に使うように指導、③保護具の保守管理の3点です。

保護具着用責任者の職務

①保護具の適正な選択

保護具の選択が誤っていると、労働者が化学物質にばく露される量が多くなり、健康に悪影響を及ぼすことにつながります。このように化学物質ごと、作業ごとに適切な保護具を選択することが職務の一つです。

②労働者が保護具を適正に使うように指導

事業場に適した保護具を選んだとしても、労働者が間違った使い方をすれば事故につながります。そうした労働災害を防ぐため、労働者が保護具を正しく使えるように教育します。
具体的には保護具の使用マニュアルを作成し、着用方法や使用方法を教え、適切な使用を促しましょう。呼吸用保護具では、労働者の顔に面体が密着するものかどうかを判断するフィットテストを年に1回以上実施する必要があります。使用する前には、密着状態を調べるシールチェックもしなければいけません。
このように保護具が適切に使用されているかを確認し指導することも職務の一つです。

③保護具の保守管理

保護具は保守管理を疎かにすると、劣化し十分な性能を発揮しなくなる恐れがあります
保護手袋の破過時間、防毒マスクの吸収缶の有効時間などを守って使用しなければなりません。
交換用の保護具や部品(濾過材、吸収缶、電池等)を常時備え付け、適時交換できるよう管理することも求められます。
さらに、使用前後などの点検も必要です。これらをまとめて保守管理マニュアルを作成するとともに保護具に関する記録を作り、適切に保管するよう指導するのも職務の一つです。

労災事例~硫酸によるやけど~

ある非鉄金属製造の作業場で硫酸を用いて金属の洗浄中、使用したポリ塩化ビニル製の保護手袋が適切に保守管理されなかったため1mm程度穴が開いており、そこから洗浄液が浸透し手指に化学やけどを負った事故も起こっています。

保護具着用管理責任者はどんな人がなれるのか?

保護具着用管理責任者になれる条件を解説する図次の6要件のいずれかを満たす人を保護具着用管理責任者に選任できます。

①化学物質管理専門家の要件に該当する
②作業環境管理専門家の要件に該当する
③労働衛生コンサルタント試験に合格した
④第1種衛生管理者免許または衛生工学衛生管理者免許を持っている
⑤作業主任者技能講習を修了した(特定化学物質、金属アーク溶接、有機溶剤、鉛、四アルキル鉛)
⑥安全衛生推進者講習を受講した

事業場ごとに、最低一人の保護具着用管理責任者が必要です。複数人を選任しても良く各特別足の作業主任者が兼任すること、化学物質管理者が兼任することも可能です。
各作業主任者は、保護具の使用状況を監視することが職務とされているのに対し、保護具着用管理責任者は保護具の選択に関すること、労働者の保護具の適正な使用に関すること、保護具の保守管理が職務となります。
ただし、作業環境測定結果が第3管理区分となった場合の保護具着用管理責任者は、作業主任者を兼任することはできません。
管理業務であるため、社内で一定の権限を持っている管理職を選任することが望ましいです。

上記に該当する労働者がいない場合は講習の受講が必要

上記①~⑥に該当する適任者がいない場合は、通達で定められた「保護具着用管理責任者教育」を受講した人から選任しなければいけません。

6時間の講習で、全国の講習機関で定期的に開かれています。

そるぶ

適任者がいない場合は、保護具着用管理責任者教育の講習を受けた人から選任してね!適任者でも知識に自信がない人は講習を受けることをお勧めするよ!

皮膚等障害化学物質等の製造・取り扱い時の不浸透性保護具使用の義務化

皮膚等障害化学物質を解説する図労働安全衛生規則の改正で2024年4月1日から皮膚等障害化学物質等を製造したり取り扱ったりする場合は不浸透性の保護具(保護衣、保護手袋、保護眼鏡など)の使用が義務化されました。
皮膚等障害化学物質とは、「皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがあることが明らかな化学物質」と定義されます。具体的には、皮膚刺激性有害物質と皮膚吸収性有害物質で成り立ち、それぞれの定義は以下の通りです。

分類 定義
皮膚刺激性有害物質(744物質

GHS分類の結果や譲渡提供者から入手したSDSなどに書かれた有害性情報のうちで「皮膚腐食性・刺激性」や「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかで区分1になっている化学物質。ただし特化則等と別規則で、皮膚又は眼の障害を防ぐために不浸透性の保護衣等の使用が義務付けられているものをのぞく。

皮膚吸収性有害物質(196物質 皮膚から吸収される、または皮膚に侵入して健康障害を生ずる恐れが明らかな化学物質。ただし特化則等と別規則で、皮膚又は眼の障害を防ぐために不浸透性の保護衣等の使用が義務付けられているものをのぞく。

皮膚刺激性有害物質と皮膚吸収性有害物質の両方に該当する物質が124物質あるため、皮膚等障害化学物質は1064物質になります。

確認方法としては、使用する製品の最新のSDSを確認してください。弊社のSDSであれば15項の適用法令に記載しています。以下は弊社のメタノールのSDSの例です。SDSは参照先のデータベースによって区分が変わることがあります。あくまで参考としてください。メタノールのSDSの例

・皮膚腐食性…皮膚が化学物質に触れることで、皮膚の組織が破壊されて時間を経ても回復しない性質
・皮膚刺激性…皮膚が化学物質に触れることで、一時的に皮膚が赤くなったり、かゆみを起こしたりするものの、一定の時間が経てば回復する性質
・感作性…ある物質にさらされることで、アレルギー反応の起こさせる性質。呼吸器感作性は呼吸器に影響を与え、ぜんそくなどを引き起こす。皮膚感作性は、皮膚に影響を与え皮膚炎などを引き起こす

皮膚等障害化学物質はそれぞれ不浸透性であることが求められます。
皮膚等障害化学物質に該当しない製品をお求めの方はぜひ、下記より弊社までお問い合わせください。

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