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化学規制
2024.12.20
毒物及び劇物取締法(毒劇法)とは?有機溶剤との関係を中心にわかりやすく解説
「毒物及び劇物取締法(毒劇法)」を、一般的なシンナー・有機溶剤の例を見ながらわかりやすく解説します。
目次
毒物及び劇物取締法(毒劇法)とは?
毒物及び劇取締法とは、広く一般流通している化学物質のうち、健康被害を起こす恐れが高い物質を毒物や劇物に指定し、規制する法令です。
具体的な規制内容は、営業者の登録制度や容器等への表示、販売(譲渡)の際の手続き、盗難・紛失、漏洩等防止策、運搬・廃棄時の基準などが定められており、指定物質の不適切な流通や漏洩などが起きないことを目的としています。
一般的には略して毒劇法とも毒劇物取締法とも呼びます。
同法では指定した化学物質を毒性が強いものから純に特定毒物と毒物、劇物に区分けしています。
ただし、医薬品と医薬部外品では、毒物や劇物に指定されている場合でも適用が除外されます。
そるぶ
毒物及び劇物取締法(毒劇法)は毒性が高いと法令で指定された化学物質の盗難、紛失や漏洩を防止することを目的とした法律だよ!
毒劇法の対象物質と区分
特定毒物は、毒劇法が指定した化学物質のうち特に毒性の強いものです。オクタメチルピロホスホルアミド や四アルキル鉛など13種の物質が指定されています。
その次に毒性が強い毒物は、ヒ素やフッ化水素など100種類以上指定されています。
毒劇法指定物質の中では、毒性が比較的弱い劇物は300種類以上指定されています。一般にシンナーや洗浄用途によく使われる有機溶剤ではトルエン、キシレン、メタノール、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)の5種が指定されています。
毒劇法関連の法令の改正により指定物質が見直されることがあります。最新の情報をチェックするようにしてください。
そるぶ
有機溶剤を製造・輸入・販売する際には、事前に毒劇法の指定物質でないかSDSの15項.適用法令を確認してね!
原体と製剤の違い
毒物劇物は、毒劇法別表、毒物及び劇物指定令に記載されていますが、ここに物質名のみが記されている場合は原体のみが取り締まりの対象で、製剤は対象ではありません。
原体は化学的純品いわゆる100%の物質のことです。製剤とは、希釈したり混ぜ合わせたりして加工したものです。(粉砕や小分けのように原体の組成に化学的な影響を与えない場合は原体とみなします)
毒物劇物の毒性とは?
特定毒物、毒物、劇物が持つ毒性とは、以下の三つです。
①急性毒性
②皮膚腐食性
③眼などの粘膜に重篤な損傷
それぞれを解説します。
急性毒性とは?
急性毒性とは、その化学物質に1回または短時間に複数回さらされたことによって短期間に出る毒性のことです。(一般的には14日以内)
皮膚腐食性
皮膚腐食性とは、皮膚がその物質にさらされることで破壊され、一定期間を経ても回復しない性質のことです。
眼などの粘膜に対する重篤な損傷
眼の表面が、その物質にさらされることに伴う眼の組織損傷、視力の重篤な低下でさらされてから21日以内に完全に回復しないもののことです。
毒劇法の規制内容は?
毒劇法で重要になるポイントに絞り、規制内容を解説します
毒物劇物の製造、販売、輸入する際に必要となる登録
国または都道府県等による登録を受けなければ、毒物劇物を販売または授与の目的で製造や輸入、販売、貯蔵、運搬、陳列することはできません。
登録を受けるには漏洩や盗難の対策などの適合基準を満たした施設が必要です。
登録の申請先は事業所の所在地の都道府県知事(保健所設置市の場合は市長)の登録を受けなければなりません。
製造業または輸入業の登録は5年ごと、販売業の登録は6年ごとに更新が必要です。
毒劇物を業務で使う場合、毒劇法に規定する業務上取扱者と見なされ、毒劇法の一部が適用されます。
しろあり駆除業者や運送業など一部業種で、指定された毒物劇物を取り扱う場合には毒物劇物業務上取扱者の登録が必要になります。
毒物劇物取扱責任者とは?
毒物劇物取扱責任者は毒物劇物の盗難・紛失・漏洩等の対策する責任者です。
毒物劇物の登録が必要な業者および毒物劇物業務上取扱者においては製造所、営業所等は事業所ごとに毒物劇物取扱責任者を任命し設置届を管轄の自治体に提出しなければいけません。
毒物劇物取扱責任者は、薬剤師か応用化学に関する学科を卒業した者か毒物劇物取扱者試験に合格した者のみがなれます。
毒物劇物の販売・譲渡
毒物劇物を販売・授与するときには、定められた手続きがあります。
以下の内容を記した譲受書(毒劇物譲受書)が必要で、5年間保管しなければいけません。
・毒物または劇物の名称と数量
・販売または授与の年月日
・譲受人の氏名と職業、住所 ※法人の場合は法人名と所在地
毒物劇物登録業者以外では譲受書の提出を受けてからの販売・授与となります。
購入者が18際未満でないことや使用目的に不審な点がないことを確認します。
※法第3条の4に定める引火性や発火性、爆発性がある毒物や劇物であっても政令さだめるもの(ナトリウムやピクリン酸など)は身分証などを確認した上でないと販売してはいけません。
そるぶ
譲受書は記載が必要な箇所たくさんがあるから漏れがないようにね!
貯蔵等施設と取り扱いに関する規制
毒物劇物を貯蔵、陳列する場合は以下のことを守らなければいけません。
・その他の物と明確に区分された毒物劇物専用の場所とする
・盗難防止のため敷地境界線から十分離すか、一般の人が簡単に近づけない措置を講ずる
・設備に飛散、漏れ、しみ出しなどの恐れがないか、保守点検する
・貯蔵設備は施錠できる設備で、簡単に割れたり壊れたりしない頑丈なものとする
・常時施錠し、鍵の管理者、代理人の選任をするとともに管理簿の作成も行う
・在庫管理として管理簿を作成し、実数と一致しているかの確認を定期的に実施する
表示義務
毒物劇物の容器、包装、貯蔵・陳列場所には「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」の表示が必要です。
毒物:赤地に白で「医薬用外毒物」
劇物:白地に赤で「医薬用外劇物」
貯蔵・陳列場所の外側に表示が必要です。
容器、包装には毒物劇物の名称、成分、含量、法人名、所在地を表示しなければ販売、授与できません。
一部の物質ではこれらの他にも記載義務がありますが、一般的な有機溶剤では上記以外の記載義務はありません。
毒物劇物の廃棄
基本的には中和や加水分解、酸化、還元、希釈などの方法で毒物劇物に該当しない物にしてから廃棄します。廃棄にはコストがかかるので、必要な分だけ購入しましょう。
SDS
毒物劇物を販売・授与するときまでに、譲受人に対してSDSを提供しなければいけません。
事故対応
毒物劇物の漏洩などの事故が起こった場合には、保健所や消防署、警察署に直ちに届け出た上で、必要な応急の措置を講じる必要があります。
盗難や紛失事故の際は、直ちに警察署に届け出る必要があります。
毒劇法の違反事例
毒劇法に違反した場合の事例を3件見ていきます。
毒劇法の違反事例~硫酸と硝酸の盗難~
山形県のある高校の薬品庫に保管していた硫酸と硝酸の瓶(各500g入)が1本ずつ盗まれ、殺人人未遂事件に使用されました。
毒劇法の違反事例~メチルエチルケントン(MEK)の漏洩~
一般的に流通する有機溶剤関係では、ある山口県の工場のポリエステルの製造工程で、原料切り替えのためメチルエチルケトン(MEK)を使い設備の洗浄をしていたところ反応釜のポリエステル投入口からMEKが875L漏洩しました。
毒劇法の違反事例~トルエン吸引目的で所持~
ここまでで説明はしていませんでしたが、毒劇法第3条の3で、興奮や幻覚、麻酔の作用を持つ毒物劇物を摂取や吸入すること、摂取や吸入目的で所持することを禁止しています。
代表的な有機溶剤の一つであり、シンナーの成分の一種で接着材や塗料に含まれる劇物のトルエンを吸引目的で所持したとして、男性が毒劇法違反で神奈川県警に逮捕された事件も起きています。
毒劇法のまとめ
毒劇法に該当する化学物質を使うと、保管や廃棄などで厳しい規制がかかり、違反すれば罰金や懲役刑を科されることもあります。また毒性が強いため万が一、事故が起こると最悪の場合、死者がでることもあるため、安全管理は万全を期す必要があります。
トルエンやキシレン、メタノール、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)を使用または、それを含むものを使っているなど、毒劇法関連でお困りの方はお問い合わせください。
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